令和8年度 特定領域研究助成の助成課題を募集します。
募集期間は2026年9月7日(月)~2026年10月5日(月)12:00(締切厳守)です。
多数のご応募をお待ちしております。

本研究助成の趣旨

セコム科学技術振興財団では、研究者の自由な発想に基づく独創的なアイディアに期待し、安全安心の確保や災害防止等、国民生活に密着する研究課題を広く募集・助成してきました。そして、国民生活の安全安心に寄与する科学技術の発展をより積極的に推進するために、当財団が重点的に助成する領域を指定し、その領域の研究統括を担う領域代表者が示す研究構想に沿う研究課題に助成する研究助成を実施しております。

令和8年度は、情報医療分野、先端数理分野、防災分野について研究課題を募集します。
 

公募する領域について

情報医療分野
領域名 〈情報〉のもつ生物学的効果を用いた「情報医療」の技術開発と実装
領域代表者 本田 学(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 部長)(予定)
研究構想

人間の脳は、身体の内外環境から入力される〈情報〉をモニタし、それを処理することで、環境に合わせて最適の行動をとったり、身体の内部状態を調整したりしている。脳の情報処理は、神経伝達物質をはじめとする化学反応によって行われていることから、身体が受け取る〈情報〉は、薬剤をはじめとする〈物質〉と同じように脳に作用する可能性がある。こうした 〈情報〉がもつ生物学的効果を健康・医療分野に応用しようとするのが「情報医療」である。

心や脳の病に対する薬剤の開発には、膨大な時間と費用がかかるとともに、効果の限界や副作用など安全性の問題も大きく、新しい原理に基づく有効な薬剤がなかなか出て来ないのが現状である。これに対して、例えば薬剤抵抗性の強いうつ症状や不安障害に対して有効な認知行動療法は、カウンセリングを通して「認知の歪み」を修正し行動変容を導くことで、治療効果を得ようとするアプローチである。また、認知症行動・心理症状に対して〈見る〉〈話す〉〈触れる〉〈立つ〉を主軸とした介護技法により顕著な改善効果を示すユマニチュード・ケアは、近年国際的に注目を集め、わが国の医学系教育機関での導入が加速している。これらのアプローチは、適切な〈コミュニケーション情報〉が治療効果を示す実例といえる。また、人間の生命の仕組み、特に脳にとって適切な〈情報環境〉を構築することで心身の健康を導くアプローチも注目に値する。こうした情報的な側面から脳にアプローチする「情報医療」は、薬物療法や再生医療など現代医療の主軸をなす「物質医療」を補完する効果を持つことが期待される。

その一方で、こうした「情報医療」の開発はまだ端緒についたばかりであり、健康・医療分野に実装するための技術開発、臨床効果の実証、副作用を含めた安全性の確立、情報がもたらす生命科学的効果に伴う倫理的な課題の検討など、多くの課題が残っている。「情報医療」を健全に育成・発展させていくためには、医学分野のみならず、工学分野、情報学分野、環境学分野など、専門分野を超えた融合的アプローチが必要である。

そこで本特定領域研究では、「情報医療」の社会実装を推進するために必要な技術開発や臨床現場での実証研究を強力に推進する、医学・工学・情報学・環境学などを含む広範な領域からの研究提案を募集する。具体的には、有効な情報を投与(呈示)するためのハードウェア開発、有効な情報コンテンツの制作やソフトウェア開発、臨床現場を含む実社会における効果の実証と安全性の確立など、「情報医療」の社会実装に結びつく研究開発を対象として想定している。加えて、研究参加者が相互に交流することで生まれるシナジー効果により、「情報医療」の社会実装が加速することを期待している。

選考員 本田 学(国立精神・神経医療研究センター 部長)(予定)
梅田 聡(慶應義塾大学 文学部 教授)
戸辺 義人(青山学院大学 理工学部 教授)
助成額 1件あたり最大1,500万円/年
予定採択数 数件程度の採択を予定
先端数理分野
領域名 安全・安心社会を支える脳型レジリエント計算知能の先端数理研究
領域代表者 鈴木 秀幸(大阪大学 大学院情報科学研究科 教授)
研究構想

近年のAI技術の発展は目覚ましく、社会課題の解決、産業の効率化、科学研究・技術の発展など、さまざまな分野において革新が進む一方で、その計算に要するエネルギーが大きな課題となりつつあります。AI計算の高効率化は、持続可能な社会の実現に寄与するのみならず、AI技術をより身近で広く利用可能なものとし、安全・安心社会の実現に寄与すると期待されます。低消費エネルギーでありながら高度な知的情報処理を行う脳神経系のように、ばらつきや揺らぎを伴う計算素子に基づきながらも総体としては有意義な機能を実現できるならば、現行のGPUなどを用いたAI計算と比べて飛躍的にエネルギー効率の高い「計算知能」が実現できると考えられます。計算素子のばらつきや揺らぎなどの特性を柔軟に許容・活用するレジリエントな計算知能の実現には、計算モデルとハードウェア実装を融合的に捉える数理的アプローチが求められます。

本特定領域研究は、脳神経系やAI計算モデルに関する知見を踏まえ、計算素子の特性を柔軟に許容・活用し、総体として有意義な機能を実現する「脳型レジリエント計算知能」の数理的基盤を構築することを目指すものです。本領域では、自然計算、非線形数理、AI・機械学習、最適化などの観点からの数理研究、アナログ電子回路や新原理計算デバイスなどの物理・ハードウェア実装に関する数理研究、さらには個別応用ドメインに特化した研究提案も歓迎します。たとえば、低消費エネルギー実装に適したスパイキングニューラルネットワークモデル、物理現象を活用したリザバー計算、ハードウェア実装志向のAIモデル、ばらつきや揺らぎをもつ多体系における機能創発などの研究テーマが想定されますが、これらに限るものではなく、応募者独自の観点や専門性を活かした挑戦的な研究提案を期待します。また、多様なバックグラウンドを持つ研究参加者が相互に交流することによって数理的シナジー効果が生み出されることも期待しています。

選考員 鈴木 秀幸(大阪大学 大学院情報科学研究科 教授)
※数名追加の予定
助成額 1件あたり最大1,000万円/年
予定採択数 数件程度の採択を予定
防災分野
領域名 危機対応科学 ― 社会全体の危機対応能力(Response Capability)を形成する科学 ―
領域代表者 林 春男(京都大学 名誉教授)
研究構想

大規模危機では、行政、消防、警察、医療、福祉、ライフライン事業者、企業、地域組織、専門家など、多数の主体がそれぞれの責任・権限・専門性を保ったまま対応に参加します。必要な対応能力と対応資源は社会の各所に分散しており、これらを一つの組織に統合し、一人のリーダーがすべてを把握して指揮することは現実には困難です。必要なのは、多数の自律した主体が一つの組織にならなくても、社会全体として必要な危機対応能力を形成し、発揮できる仕組みです。

本領域では、共通の目的のもとで危機対応に参加する主体を Collective、複数の Collective が相互に関係しながら全体として危機対応を行う状態を System Collective と捉えます。そして、危機対応を Sense → Intent → Plan → Act → Review という共通の情報処理プロセスとして捉え、分散した情報から Shared Situation Awareness を形成し、Common Intent と Action Plan へ結び付け、その実行結果を次の対応へ反映するための原理と方法を研究します。そこではAIを人間の判断や責任に置き換えるものではなく、大量・多様な情報を扱う人間とCollectiveの情報処理を支援する手段として位置付け、その有効性、限界、適用条件を明らかにします。

危機対応科学(Crisis Response Science)は、危機によって顕在化する課題に対して、社会が必要な危機対応能力をどのように形成し、発揮し、改善するのかを共通の研究対象とし、自然科学、社会科学、人文学、情報科学、工学等の理論・方法・技術・知識を接続する新たな分野横断的研究領域です。個別の災害や組織だけに閉じた知見ではなく、異なる危機、異なる主体、異なる条件のもとで比較・検証可能な科学的知識として蓄積することを目指します。


・本領域で募集する研究

2027–2029年の Research Program では、「多数の Collective が参加する大規模危機において、System Collective としての危機対応能力は、どのように形成され、発揮され、改善されるのか」を中心的な問いとし、次の4つの Research Streams に対応する具体的な Research Proposal を募集します。

  • Research Stream 1 危機対応情報構造:異なる Collective が持つ情報を相互に理解・利用し、Shared Situation Awareness を形成するための標準的な情報構造。
  • Research Stream 2 危機対応情報処理:分散した情報を Shared Situation Awareness、Common Intent + Action Plan、Act + Review へつなぐ標準的な情報処理。
  • Research Stream 3 AI支援型危機対応:標準化された情報構造と情報処理手順を基盤に、System Collective に必要な情報処理をAIがどこまで支援できるか、その有効性・限界・条件。
  • Research Stream 4 System Collectiveの機能化:異なる Collective が自律性と専門性を保ちながら危機対応プロセスを共同化し、全体として機能するための組織的・社会的条件と実証。

研究分野そのものを限定するのではなく、上記のResearch Streamsに関連して、危機対応科学の何を新たに明らかにできるかを重視します。危機管理・防災分野に限らず、情報科学、AI、認知科学、意思決定科学、ヒューマンファクター、オペレーションズ・リサーチ、組織論、社会心理学、公共政策、医学、工学等から、研究者自身の専門性を生かした具体的で検証可能な提案を期待します。採択研究の独立性を保ちながら、共通概念・データ・シナリオ・評価方法・実証環境等を介して成果を比較・接続し、個別研究から得られた知識を危機対応科学として共有可能な科学的知識へ発展させます。


・目指す成果

3年間を通じて、危機対応情報の標準的な構造と情報処理手順、AI支援の有効性と限界、System Collective の機能化に関する実証的知見、研究方法・評価方法、共通研究基盤、研究者ネットワークを形成します。最終的には、現場で生じる問題を科学的な問いに変換して研究・検証し、得られた知識を比較・接続して、次の研究と次の危機対応へ還元する研究循環を確立します。これによって、「危機対応科学」を持続的な研究領域として成立させることを目指します。

選考員 林 春男(京都大学 名誉教授)
※数名追加の予定
助成額 1件あたり最大1,500万円/年
予定採択数 数件程度の採択を予定

概要

公募期間 令和8年9月7日(月)から令和8年10月5日(月)12:00まで(時間厳守)
助成期間 3年間を基本とし、2年間も可能とします。
助成対象
現に業務として活発な研究活動を行っており、助成期間中継続的に研究を実施することができる
国内の大学・大学共同利用機関法人・国立研究開発法人に所属する研究者を対象とします。
選考方法 選考委員による一次選考(書類審査)および二次選考(面接審査)
※面接審査日は、決まり次第この欄でお知らせします。
応募方法 募集要領をよく読み、研究助成申請書(書式E-1A)を作成の上、当財団まで電子メールに添付して送付下さい。
ダウンロード 募集要領(令和8年度) 
研究助成申請書(書式E-1A)(令和8年度)
注意点
研究期間中は、領域代表者(共同代表者)が研究統括として当該領域の研究をマネジメント致します。
領域代表者が途中経過の報告などを求めることがありますので、申請者はご対応頂くものとします。
参考 令和6年度 特定領域研究助成・研究助成贈呈式
令和7年度 特定領域研究助成・研究助成贈呈式

過去に募集を行った領域

問合せ先・申請書送付先

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-5-1 公益財団法人 セコム科学技術振興財団

E-mail: sstfoundation@secom.co.jp