領域代表者
西田 佳史 先生

東京工業大学 工学院機械系
教授

 

安全・安心を脅かす社会的課題の解決のためには、新たな科学技術の開発のみならず、その科学技術が可能とする新しい課題解決の考え方の普及や、それを受け入れ可能にする社会システムの構築が不可欠である。例えば、近年、普及が目覚ましい衝突回避のための自動ブレーキ技術であれば、基本となる環境認識技術に加え、人と人工知能の協業による衝突回避という新たな考え方の普及、自動運転技術の課題の整理などが行われている。同様の解決が、例えば、市街地の防災情報システム、高齢者や子どもなどの生活機能変化者の見守りシステム、人間のメンタル・フィジカル両面の健康支援システムなどで求められている。しかしながら、我々の生活を変化させる科学技術では、科学技術開発、新たな考え方の普及、社会システムづくりの3つの要素が相互作用しながら社会実装を進める方法論の開発はなされておらず、我々の生活の安全・安心に役立つ可能性のある技術が社会実装に至っていない現状がある。

本領域では、具体的な安全・安心に関わる課題を設定し、科学技術開発、新たな考え方の普及、社会システムづくりの相互作業に基づく社会実装を進める研究提案を募集する。提案にあたっては、人文・社会学的観点からの課題分析や社会の構造・仕組みの面からの検討、工学的観点からの課題整理と解決に向けた各種工学的要素を統合化手法の開発、技術を現場や社会に広げていくための教育・リスクコミュニケーション手法の開発など多面的な提案が望まれる。また、研究提案にあたり、とってつけたような文理融合的体制は不要であり、多面的な取り組みが実質的に行える体制づくりが望まれる。