研究領域(令和4年度採択)
情報セキュリティ分野
領域名 | 超スマート社会の「悪」の研究 |
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領域代表者 | 坂井修一(東京大学 副学長/附属図書館長/情報理工学系研究科 教授) |
研究構想 | 私たちの社会は、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)が高度に融合した超スマート社会(Society5.0)へとすみやかに向かいつつあります。パソコンやスマートフォンだけでなく、自動車や医療機器、プラントや家電品などあらゆるものがインターネットに接続され、ネットの向こう側に置かれたクラウドサーバ群とともに、情報を収集・交換・処理・出力することで世界が動いていく、そういう世の中がもうすぐやって来ようとしているのです。 そんな超スマート社会が進展すればするほど、重要になるのが個人や組織の安全・安心の確保です。フィッシングによる情報詐取、ランサムウェアによる恐喝、標的型攻撃による機密漏洩やプラント停止、大規模DDoS攻撃による金融システムや国家機能の麻痺など、世界中の国々・世界中の人々がサイバー攻撃の脅威にさらされています。こうした攻撃は日々に高度化・多様化し、攻撃対象は広範になり、国家や大規模テロ集団の関与が疑われるものが増え、被害は大きくなり続けています。自動運転車が公道を往来し、遠隔医療が日常的に行われる近未来には、サイバー攻撃の被害は、さらに多くの社会組織に及び、また人命にまで及ぶようになっていくでしょう。 超スマート社会の安全・安心を守るためには、これまでも言われてきたように、暗号の強化やソフトウェア脆弱性の除去などの技術、サイバーセキュリティ基本法や個人情報保護法などの法律、組織マネジメント、教育など、多くの分野の研究開発が必要であり、またこれらの分野が協力・協業することが必要です。しかし、それ以上に重要なのが、新しい社会でどのような「悪」が企てられているのか、そのありかや動機や目的を探り、来たるべき攻撃を予知することです。これによって、どのような攻撃が誰に対していつ仕掛けられるのかが高い蓋然性をもって予測でき、防御や回復のための手段を講じることができるようになります。そこから先は、技術と法律の世界になるわけです。 本領域では、文理融合によって、超スマート社会の安全・安心を飛躍的に高める研究を募集します。そのために、テーマとして以下の項目をすべて満たしていることが要件となります。 人文社会系の研究者、特に政治学者や社会心理学者を研究メンバーとし、超スマート社会の「悪」のありかや動機や目的がどのようなところにあるのか、これがどのような特徴を持つのかを探求すること
1の政治学者・社会心理学者などと情報技術の専門家で合同チームを作り、それぞれの分野で成果をあげるとともに、文理融合によるシナジー効果を示すこと。
必要であれば、法律や経済(経営)の専門家を加えてもよい。
近未来に企てられるであろう攻撃を検討した上で具体的に設定し、これの対策となる技術やマネジメント法をパイロットシステムとして示すこと。パイロットシステムは、社会的・物理的な実体を伴うプロトタイプであることが望ましいが、そうでない場合でも概念設計までは行い、実社会のどのような場面で使われるのかを明示し、その有効性を評価検証すること。
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選考員 | 坂井修一(東京大学 副学長/附属図書館長/情報理工学系研究科 教授) 大江和彦(東京大学 大学院 医学系研究科 教授) 城山英明(東京大学 未来ビジョン研究センター センター長/大学院 法学政治学研究科 教授) 宍戸常寿(東京大学 大学院 法学政治学研究科 教授) 寳木和夫((株)ハイセーフ 代表取締役、産業技術総合研究所 客員研究員) |
実施課題 | ・SNSにおける欺瞞とその広がりの自動検出・推測と政治学・社会学的分析および予防的介入 (静岡大学 狩野芳伸 准教授) ・権限の濫用を抑止する技術的・社会的しくみに関する研究 (早稲田大学 佐古和恵 教授) ・サイバーフィジカル空間に顕在する「悪」とAIの「悪」に関する立法課題と対応するガバナンスシステムの研究 (一橋大学 寺田麻佑 教授) ・サイバー攻撃の被害者予測システムと内部犯罪に強力な機械学習モデルの構築 (大阪大学 宮地充子 教授) |