研究領域(平成30年度採択)
平成30年度の研究助成贈呈式(キックオフ)の様子はこちら【情報セキュリティ分野】
領域名 | IoT時代のサイバーセキュリティとセキュリティ経営・法・社会制度 |
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領域代表者 | 湯淺墾道(情報セキュリティ大学院大学 教授) |
研究構想 | サイバー攻撃の技術的態様や手法が日々高度化し、攻撃対象も、個人情報や企業の営業秘密等の機密情報だけではなく、重要インフラを対象とした攻撃が増えている。またIoT等の普及により、重要インフラ事業者にとどまらず、種類や規模の大小を問わず、経済社会のあらゆるセクターにおけるサイバーセキュリティ対策は急速に重要性を増している。近時は、ソーシャル・ネットワーキング・サービスから流出した大量の個人情報の選挙運動への利用や、フェイクニュースを通じた世論誘導の危険性も指摘されるようになった。民主主義、表現の自由や知る権利、選挙など、私たちの社会の基盤を支える根本的な原理・制度への脅威とサイバーセキュリティという観点も看過できなくなっている。 このような状況の下で、セキュリティ上の脅威に対する技術的防御策や情報共有体制の構築は進んでいるが、セキュリティに関する経営、法及び社会制度の面からの対応は、必ずしも十分ではない。その原因は、大別すると三点あると考えられる。一点目は経営面に係わるものである。インフラ事業者のサイバーセキュリティに関連するリスク認識が必ずしも明確ではなく、ハードウェア・ソフトウェア及び人材育成に関するセキュリティ投資に対する基準や効果が不透明である。二点目は法制度に係わるものである。サイバーセキュリティに必要な施策を実施する際、プライバシー保護や個人情報保護の要請が国際的にも増している中で、セキュリティとプライバシーが衝突する場面が増えている。通信の秘密や有体物中心の所有権制度という制約、越境する情報に対する国内法の執行の限界というような問題点が露呈するようになってきており、錯綜する権利義務関係の整理や、刑事・民事・行政の責任の再配分は必ずしも進んでいない。三点目は社会制度に係わるものである。これまで安全を支えてきた各種の保安基準等の伝統的な安全・保安体制の限界が看取されることや、コスト負担の再検討や自立的にセキュリティが確保されるようにするためのエコシステムの確立が必要とされている。 このため、本領域ではIoT時代のセキュリティについて、経営・法・制度という三つの観点から、現状を調査・分析し、より安全・安心な社会の発展のために、どのような対策が効果的かを検討し、安全・安心な社会を実現するための実践的な提案へと展開するような提案を募集する。提案においては、最先端の技術的な動向と、経営・法・制度という要素が有機的に連携するような体制が望まれる。 |
選考員 | 湯淺墾道(情報セキュリティ大学院大学 教授) 古井貞熙(Toyota Technological Institute at Chicago 学長) 手塚悟(慶應義塾大学 大学院 特任教授) 中川裕志(理化学研究所 革新知能統合研究センター グループディレクター) |
実施課題 |
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【防災分野】
領域名 | 最新科学技術を用いた自然災害の被害軽減と強靭化 |
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領域代表者 | 金田義行(香川大学 特任教授 地域強靭化研究センター センター長) |
研究構想 | 日本は世界でも有数の地震津波ならびに火山国である。地震災害では1995年阪神・淡路大震災、2011年東日本大震災、2016年熊本地震、また火山災害では、1986年伊豆大島、1991年雲仙普賢岳噴火、2000年三宅島の火山噴火、2014年御岳噴火など、枚挙に暇がない。今後の日本の最大の地震津波防災課題は南海トラフ巨大地震ならびに首都圏直下地震であろう。また、火山防災課題では、九州地域で活発化している一連の火山活動や巨大地震との関連が指摘されている富士山噴火、あるいは地球規模の影響が危惧される喜界カルデラ噴火である。 一方、地球温暖化に伴い、風水害・土砂災害が日本各地で頻発している。最近では、2004年台風18号被害、2011年台風12号被害、2015年常総市の水害、2017年九州北部豪雨災害、2014年広島土砂災害などが発生している。 このように、日本は地震津波災害をはじめ多くの自然災害が発生し、これらが複合災害として発生することも危惧されており、その被害軽減や強靭化に向けた取り組みが喫緊の課題である。これらの自然災害課題は世界共通であり、この課題解決に向けた取り組みは国際貢献としても重要な役割を担うものである。 本領域では、従来の防災対策や防災教育の考え方に捉われずに、先端シミュレーション、人工知能やビッグデータを用いたデータサイエンスならびにVR技術等の最新科学技術を用いた地震津波、風水害等の自然災害に対する予測や被害軽減ならびに人材育成に関わる提案、さらには被災地域の速やかな復興、強靭化を推進する新規性のある社会科学提案を募集する。対象課題は次の通りである。 1.国難とされる南海トラフ巨大地震や首都圏直下地震の減災に向けた提案 2.頻発する風水害・土砂災害ならびに火山災害の減災に向けた提案 3.被災地域の速やかな復興、強靭化に向けた提案 4.その他 |
選考員 | 金田義行(香川大学 特任教授 地域強靭化研究センター センター長) 樋口知之(情報・システム研究機構 統計数理研究所 所長) 堀宗朗(東京大学 地震研究所 教授) 室伏きみ子(お茶の水女子大学 学長) 矢守克也(京都大学 防災研究所 巨大災害研究センター 教授) |
実施課題 |
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【ELSI(Ethical, Legal and Social Issues)分野】
領域名 | 最先端科学技術の社会的・倫理的・法的側面 |
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領域代表者 | 藤垣裕子(東京大学 大学院 総合文化研究科 教授) |
研究構想 | 近年の最先端科学技術のめざましい発達により、それらが社会に埋め込まれたときに何等かの社会的・倫理的・法的課題が発生する事態が多く発生している。たとえば、急速に発展した生命科学では、CRISPR-Cas9 という技術の普及によって遺伝子操作の精度が上がり、ある病気に特化した遺伝子を操作することによって病気を治すことが可能になりつつある。それにとどまらず、たとえば頭のよい人間、速く走ることのできる人間をつくる研究もおこなわれる可能性もある。そのような最先端技術を社会としてどのようにコントロールするかについては、市民に開かれた議論が必要と言われている。 また、最近の機械学習系人工知能の発達は、囲碁や将棋におけるプロとの対戦報告などでメディアをにぎわせているが、人工知能やロボットによって人間の仕事の代替が行われ職が奪われるとする報道や、与えられた目的と枠組みの範囲内とはいえ自ら学習する人工知能が組み込まれたシステムにおいて、システムが人間の意図しない動作をして人間のコントロールを越えてしまう懸念などが表明されている。学会での倫理指針の策定や国際標準の議論も盛んであり、人工知能をどうコントロールしていくかが話題となっている。あるいは、ドローンなどの無人飛行技術と人工知能を組み込んだ遠隔操作技術を組み合わせれば、火山灰や火山性の有毒ガスが多く人間が簡単には入れない無人島にドローンを飛ばし、島の形や等高線を遠隔にいながら把握することができる。しかし同時に、無人飛行技術と遠隔操作技術の組み合わせは、民生用以外の用途にも開けており、倫理的側面の議論が不可欠である。 以上のように、最先端科学技術の社会的・倫理的・法的側面の研究の必要性は高く、かつ多方面にわたっている。本領域では、このような問題意識を共有した上で日本の当該領域を切り開くような意欲的な研究を募集する。 |
選考員 | 藤垣裕子(東京大学 大学院 総合文化研究科 教授) 黒田玲子(東京理科大学 研究推進機構 総合研究院 教授) |
実施課題 |
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