現在研究実施中の領域(令和2年度採択)

社会技術分野
領域名 人間情報と社会情報の統合的利用に基づく安全安心技術の社会実装
領域代表者西田佳史(東京工業大学 工学院 機械系 教授)
研究構想

人生100年時代を迎えようとしており、新たな社会的課題が生じている。2015年に国連で採択された持続可能な開発のための目標(SDGs)でも、あらゆる年齢や障害を持った人の安全性確保、サービスへのアクセスの確保、それらに配慮された都市デザインの必要性などが指摘されている。一方で、インターネット、SNS、有効利用されてこなかったビッグデータなどを用いて社会現象を観察することや、スマートホーム技術、人工知能技術を活用して生体や生活現象を計測することで、マクロスコピックな情報とミクロスコピックな情報を統合し、これまで手に負えなかった課題を手に負える問題へと変えていくアプローチが可能になりつつある。

生活に関わる解決すべきテーマとしては、例えば、高齢者の健康をモニタリングすることで働き続けることを支援する機能、安全に外出機会を増大させる移動支援機能、心身機能が変化する生活者の安全確保を支援する機能、ソーシャルディスタンス環境下で消費者被害を防止するフィードバック機能、メンタル又はフィジカル面での苦痛などを緩和して快適化するセンサ・アクション機能などが挙げられるが、これはいずれも、人間情報と社会情報の統合によって課題解決が図られるべき課題である。

本領域では、具体的な安全・安心に関わる課題(上述の例に限らない)を設定し、科学技術、新たな考え方の普及、社会システムづくりの相互作用に基づく社会実装を進める研究提案を募集する。提案にあたっては、ヘテロな情報の活用技術、計測技術、シミュレーション技術、可視化技術の要素技術開発だけではなく、これらを有機的に統合する技術の面、それによって得られる情報を現場や市民にフィードバックする社会システムの面、新たな人間情報や社会情報を扱い、また、現場からの評価を受けながら新たな課題解決の考え方を修正していくための適切なステイクホルダーを含む体制づくり面からの、多面的な提案を期待する。

選考員
西田佳史(東京工業大学 工学院 機械系 教授)
板生清(NPO法人ウェアラブル環境情報ネット推進機構 理事長)
栗原聡(慶応義塾大学 理工学部 管理工学科 教授)
戸辺義人(青山学院大学 理工学部 情報テクノロジー学科 教授)
実施課題 ・疼痛緩和治療において疼痛の程度を客観的に評価するウェアラブルセンサ方式の社会実装
 (がん・感染症センター 都立駒込病院 室伏景子 医長)
・人間環境情報に基づく熱中症対策ウェアラブルICTシステムの社会実装
 (青山学院大学 ロペズギョーム 教授)
・毛髪を用いた恒常的な心理状態の把握とストレスレジリエンスの向上を目的にしたフィードバックや継続的ケアの実現
 (滋賀大学 大平雅子 准教授)
実施課題の所属・肩書きは、採択時のものです。
先端医学分野
領域名 多階層生命医学プラットフォーム構築のための基盤技術開発
領域代表者 桜田一洋(理化学研究所 情報統合本部 先端データサイエンスプロジェクト プロジェクトリーダー)
共同代表者古関明彦(理化学研究所 生命医科学研究センター 副センター長)
後藤由季子(東京大学 大学院 薬学系研究科 教授)
研究構想

シーケンス技術、質量分析技術、情報技術の革新により、全ゲノム配列、一細胞トランスクリプトーム、エピゲノムなど、アクセス可能な広大なデータ空間が様々な階層に広がり、共有も進んできた。その延長として、階層をリンクして、そこに新しい生命原理を見出すための様々な試みが始まっている。しかしながら、データ科学と実験的生命医科学の融合が不十分なため、分野の拡充は思ったほどには進んでいない。生命科学や疫学は、これまで普遍的な説明の発見を目指して研究を積み重ねてきた。一方でこれらの知識は、予測に基づく医療には十分に応用されていない。それは説明(Explanation)と予測(Prediction)が対称ではないからだ。予測のためには従来のメカニズムに加えて、情報理論から生命現象を意味づける必要がある。説明から予測へ、予測から新たな説明へという双方向から生命医科学研究を進めていくことで、データ科学と生命医科学の融合が深まっていくことが期待される。

本研究領域ではこのような観点からの革新的な研究の提案を募集する。

選考員
桜田一洋(理化学研究所 情報統合本部 先端データサイエンスプロジェクト プロジェクトリーダー)
古関明彦(理化学研究所 生命医科学研究センター 副センター長)
後藤由季子(東京大学 大学院 薬学系研究科 教授)
谷口克 (理化学研究所 生命医科学研究センター 客員主管研究員)
黒田玲子(中部大学 先端研究センター 特任教授)
実施課題 ・深層生成モデルを用いたマルチモーダルからの共通特徴量空間の同定 
 (理化学研究所 清田純 チームリーダー)
・細胞間ネットワーク表現型解析法の開発と応用
 (東京大学 太田禎生 准教授)
・深層学習を用いた細胞内微細構造の超高効率解析法の確立と病態予測・解析への応用
 (東京大学 平林祐介 准教授)
・多階層エピゲノム情報の同時取得と統合的解析手法の確立による神経発生・老化機構解明
 (東京大学 岸雄介 講師)
実施課題の所属・肩書きは、採択時のものです。