岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 教授 西堀正洋先生インタビュー 「予防医学的な健康状態把握のための方法確立」(第1回)


敗血症は感染症による臓器障害で、患者数は世界で年間2700万人、うち3人に1人が死に至るという恐ろしい病気です。それの根本原因に関わるHRGを同定したことは、大発見といえますね。

 ありがとうございます。しかし、私はHRGを敗血症専用の特効薬で終わらせるつもりはありません。この新知見を「血管内皮細胞障害」病である生活習慣病に応用することを考えています。
 敗血症などの急性期病態で認められる血管内皮細胞障害が、生活習慣病でも起こっているとすれば、HMGB1とHRGの血中バランスを調べることで、血管内皮細胞障害が引き起こされる確立がわかる、つまり予防医学的に「生活習慣病予防システム」として使用することが可能になります。

21世紀の課題である生活習慣病の予防が、ここまで現実的に実現に向かっている事実をお聞きし、興奮を隠せません。

 こう聞くと生活習慣病がひとつのひらめきで、あっさりと解決しそうに聞こえるかもしれませんが、トレーシー教授をはじめ偉大な先人達の実績に加え、私の10年以上にわたるHMGB1-HRG研究の継続と、薬理学者としての30年以上の研究成果が土台となっています。
 AntiDAMPsを用いる治療法の発明は、発明協会から平成21年に「21世紀発明奨励賞」を授与され、また国内では「バイオビジネスアワードJapan2012彩都賞」を受賞し、国内外で高く評価されています。
 HMGB1-HRGの測定系は既に確立されているため、本研究でさらに新しく同定される新規DAMPsとAntiDAMPsの測定を加え、健康状態を把握するためのアルゴリズムを確立します。
 

今まで炎症が起これば、その部分のみを摘出する、その部分のみに効果のある抗生物質を服用するなど、生活習慣病には対症療法による治療が一般的でした。先生のご研究によって根本治療の兆しが見え、研究の壮大さ、また壮大さとは裏腹なロジックのシンプルさに驚きました。
次回はHMGB1-HRGの測定結果、さらに新規DAMPsについて詳しくお話を伺います。