宇都宮大学大学院工学研究科 准教授 横尾昇剛先生インタビュー 「災害時・平常時に機能する都市の環境・防災情報キオスクの開発」


設置場所によって、求められる機能が変わってくるのですね。

  そうです。デモンストレーションを行ったことで、新宿と宇都宮では求められるハードも情報コンテンツも違うということが明確になりました。例えば、宇都宮は太陽光パネルと蓄電池で連続運転が可能ですが、新宿は超高層ビルが作る日陰が多いため、太陽光発電のみでは電力供給が厳しくなります。情報コンテンツに関しても、宇都宮市街地の商店街では人を集め賑わいを生み出すツールとして高い評価をいただき、平常時は商店街のイベント等の情報を、災害時は建物の被災情報よりも商店街でどのようなサービスを提供しているかといった情報が求められ、東京と大きな違いが見られました。
  今年は、都市の空間特性に応じてボックス型モデルを改良するとともに、駅構内やビル前に簡易に設置できる小型のパネル型モデルを新たに開発しています。それぞれの場所でニーズを深く掘り下げ、そのニーズに応えられるハードとソフトを作り込んでいるところです。

完成後の主な納入先は、やはり自治体ですか。

 自治体はもちろん、商店街組合や大型ショッピングセンター、そしてエリアマネージメント組織です。最近は町の人々や企業が自分たちのエリアを自分たちの手で環境面と防災面をマネージメントしていくという動きがあり、そうした組織にも導入させてもらえればと考えています。また大学への導入も視野に入れています。平常時は屋根付きのバス停として活用したり、ディスプレイに休講案内をはじめ学生へのさまざまな連絡事項を表示できるなど、多くのメリットがあります。

まちづくりや快適な空間作りなど、あらゆるシーンで貢献ができる本当に柔軟なシステムだと思います。今後の研究の展開についてもお聞きしたいのですが。

 自治体や地域のまちづくりに関わる組織との連携を深めながら、今年中に改良型を複数試作し、2か所の屋外空間で実証実験を行います。来年は複数のキオスクが相互に機能を補完するシステムの検証、具体的にはボックス型の『親キオスク』を1台設置し、ワンブロック離れた位置にパネル型の『子キオスク』を置いて、親機の情報を子機が表示するかどうかを確認します。その上で、2015年にはキオスクを利用した環境・防災情報の広域ネットワーク化や、新規のビジネス展開、途上国における実演の可能性の検討を計画しています。
  また、この研究と同時に、大都市の後背地域におけるバックアップ都市の機能に関する調査も進めています。宇都宮はひじょうにインフラが整備されており、かつ余力もあります。建物や土地に空きスペースもあり、空き家やインフラ容量などの物理的な側面だけからみると、現時点で3万人程度は受け入れが可能なのです。東北でも復興住宅を造っていますが、少し離れた場所に使用可能な既存の建物があることが分かりました。
  このように大都市の後背地域で余裕がある中都市が手を挙げて、何らかの事前協定を結んでおけば、災害によって住宅を失ってしまった人々もスムーズに避難ができるのではないかと考えています。

最後に財団へのメッセージと、これから研究助成の申請を考えている方々へ一言、お願いします。

  比較的新しい社会的ニーズに応えるための新規の研究は、なかなか助成の対象にならないため、セコム科学技術振興財団のこの助成制度は本当にありがたいと思っています。
  他の助成制度との大きな違いは、審査員の先生方とのヒアリングが何回かあり、自分の研究に対してさまざまな視点からひじょうに鋭く的確な指摘とアドバイスをいただけることです。助成金をいただき、内容のブラッシュアップもできるこの制度は、実社会への還元を目標としている研究者にとって、これ以上ないほどプラスの効果をもたらしてくれます。社会の役に立つことを目指しておられる先生方には、強く申請をお勧めします。

 大きな災害に再度襲われる前に、環境・災害情報キオスクが一日も早く実用化されることを心より願っています。本日はどうもありがとうございました。