岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 病態制御科学専攻 腫瘍制御学講座 免疫学分野 教授 鵜殿平一郎先生インタビュー 「メトホルミンによる腫瘍局所免疫疲弊解除に基づく癌免疫治療」(第2回)


がん治療と免疫学の関連性は、まだまだ計り知れないものがあるのですね。

 そうですね、がん治療は単に「薬で殺傷する」というものではありません。免疫治療はもともと私たち自身の細胞が働いて病気を克服するものですから、もっと根深い問題だと考えています。
 日本で発がん率が上がった理由のひとつとして、食の欧米化が挙げられます。
 また、調理をしなくてすむ手軽なお惣菜や、お弁当などに含まれるさまざまな食品添加物に、問題があるのではと指摘されています。
 一方で、皮肉なことに欧米では、がん死亡率が減少してきているようです。
 我が国では、医療技術は進歩しているにもかかわらず、いまだに高い死亡率が続いています。ライフスタイルを含め、今後は包括的ながん対策が望まれます。

確かに祖父母の世代は、ほとんどコンビニに近寄ろうとしませんね。

 お年寄りの方々は防腐剤に頼らない、健康的な体づくりのための調理法をご存知である場合が多いです。それもあって長生きされている方々が多いのかもしれませんが、私たちの世代は厳しいでしょう。すぐに風邪を引きやすい人が周りに多いと思いますが、原因のひとつには、体に防腐剤や有害物質をため込んでしまい、抵抗力が弱まっているからではないかと危惧しています。

日頃の生活習慣を見直すことも必要とされてきていると。

 はい。食だけでなく、適度な運動をとることも望ましいですね。新陳代謝を活性化し、体に溜まった有害物質を出す「デトックス効果」が望めます。代謝の活性化はAMPKによって生理学的にもたらされますが、AMPKは運動、飢餓(空腹)、温熱などの日常起こりうるストレスにより活性化されると言われています。メトホルミンは、これらのストレスを模倣すると考えられています。さらに、代謝亢進と免疫系は密接に繋がっています。こうしたことは、学術的分野だけでなく、一般の方々に向けても啓蒙していきたいと考えています。

それでは最後に、セコム科学技術振興財団へのご要望や、これから研究助成を申請しようとしている方々へのメッセージをお願いします。

 私たちのメトホルミン研究は、セコム科学技術振興財団での採択を起点にここまで発展してきました。その意味でとても感謝していますし、少しでも恩返しができるよう頑張りたいと思っています。国の研究予算は限られた拠点に一極集中しがちですが、地方にも大きな可能性を秘めた有望な研究が沢山あります。「目利き役」としてそのような研究を今後も取り上げていただき、国全体の研究活動の振興のために尽力していただきたいと切に願っております。
 また、私はことあるごとにセコム財団の研究助成のことを知り合いに話していますが、意外と知らない研究者が多いことがわかりました。知っていても分野が異なると思っている研究者も多いようです。私のようなバイオ関連の研究者も多く採択されていますので、是非応募されることをお勧めいたします。

免疫という複雑な分野について分かりやすく教えていただき、ありがとうございました。先生のご研究の進展と、今後のご活躍をお祈りしております。