京都大学 教授 戸口田淳也先生インタビュー「疾患特異的iPS細胞による成長軟骨版異常(新生児発症多臓器炎症性疾患)の解明」(第3回)
CINCA症候群の成長軟骨の異常増殖に、SOX9のシグナルが関係していることが、明らかになったのですね。SQ22356は、CINCA症候群の変形関節に対して治療薬になるのでしょうか。
可能性はありますが、異常増殖を完全に抑えることができたわけではないので、まだ分かりません。
治療薬を探す方法は、2つあります。
ひとつは、製薬会社や研究者が持っている化合物ライブラリーの中から、新しい薬を見つけ出す方法です。ライブラリーに収められている化合物は約1万個あり、それを一つずつcAMPに加えて、どう変化するかを調べていきます。これは膨大な時間がかかるうえに、有効な化合物が見つかっても、どのような副作用があるか、がんにならないか等、人体への悪影響を排除して安全性を確保するだけで10年くらいかかってしまいます。
もう一つの方法は、すでに世の中で使用されている薬を試してみることです。人体に使用しても安全であることが確認されているので、時間を大きく短縮できます。
治療薬を探す方法は、2つあります。
ひとつは、製薬会社や研究者が持っている化合物ライブラリーの中から、新しい薬を見つけ出す方法です。ライブラリーに収められている化合物は約1万個あり、それを一つずつcAMPに加えて、どう変化するかを調べていきます。これは膨大な時間がかかるうえに、有効な化合物が見つかっても、どのような副作用があるか、がんにならないか等、人体への悪影響を排除して安全性を確保するだけで10年くらいかかってしまいます。
もう一つの方法は、すでに世の中で使用されている薬を試してみることです。人体に使用しても安全であることが確認されているので、時間を大きく短縮できます。
それは、たとえば風邪薬や胃薬などの成分が、軟骨の異常にも有効に作用する可能性がある、ということでしょうか。
はい。特定の症状を改善させるために作られた薬であっても、使用した化合物の効果が100%確認されているわけではありません。そのため本来の用途とはまったく違う効果が突然見つかることも、実際にあります。
もちろん商品化されている薬の中に、目的の作用を持つものは存在しないかもしれません。しかし私を含め、希少難病を研究している先生たちは、少しでも早く患者さんに届けることができる治療薬から研究を始めているはずです。
もちろん商品化されている薬の中に、目的の作用を持つものは存在しないかもしれません。しかし私を含め、希少難病を研究している先生たちは、少しでも早く患者さんに届けることができる治療薬から研究を始めているはずです。
治療薬が一日も早く見つかり、患者さんとそのご家族のもとに届くことを祈っています。今後、ますますiPS細胞を使った臨床研究が増えていくと思われますが、iPS細胞研究所の今後の目標について教えていただけますか。
いろいろありますが、研究所が提供するiPS細胞の品質向上は、そのうちの一つです。
たとえばiPS細胞から心筋細胞を作り、患者さんに移植手術を行った後に腫瘍ができたとします。このとき、2つの原因が考えられます。
ひとつは、移植した心筋細胞のなかに、未分化のiPS細胞が混ざっていた可能性です。一千万個の細胞の中にひとつでもiPS細胞が残っていると、iPS細胞は増殖して、塊を作ってしまいます。
もうひとつは、iPS細胞を作るときにDNAに傷が入ってしまったというケースです。傷が入ったiPS細胞は正常な分化を行わないため、患者さんの体内に移植されたあと、腫瘍になってしまう可能性があります。
この2つは、よく混乱されてしまいますが、まったく違います。
たとえばiPS細胞から心筋細胞を作り、患者さんに移植手術を行った後に腫瘍ができたとします。このとき、2つの原因が考えられます。
ひとつは、移植した心筋細胞のなかに、未分化のiPS細胞が混ざっていた可能性です。一千万個の細胞の中にひとつでもiPS細胞が残っていると、iPS細胞は増殖して、塊を作ってしまいます。
もうひとつは、iPS細胞を作るときにDNAに傷が入ってしまったというケースです。傷が入ったiPS細胞は正常な分化を行わないため、患者さんの体内に移植されたあと、腫瘍になってしまう可能性があります。
この2つは、よく混乱されてしまいますが、まったく違います。
未分化のiPS細胞が残らないようにするためには、限りなく100%に近い分化誘導技術が求められるのでしたね。遺伝子に傷をつけずにiPS細胞を製作する方法については、研究が進んでいるのでしょうか。
「DNAに傷が入らないようにiPS細胞を制作する」というのは、実はとても難しいことなのです。現在、多くの研究者がiPS細胞を安全に製作するための方法作りに取り組んでいますが、どの方法でも、傷が入る可能性をゼロにすることはできないでしょう。これはある意味、仕方がないことです。
なぜならiPS細胞に限らず、人間の身体の細胞はある程度の頻度で、必ず傷が入るからです。
なぜならiPS細胞に限らず、人間の身体の細胞はある程度の頻度で、必ず傷が入るからです。
たしかに、一定の年齢になれば誰もががんになる可能性があります。
もっと身近な細胞の突然変異があります。ほくろです。多くの人はほとんど意識していないと思いますが、ほくろは、本来黒くならないはずの皮膚細胞が突然変異によって黒くなった結果なのです。年齢や生活習慣に関係なく、誰の身体にもほくろができるように、私たちの身体の細胞はどんどん変異を起こしているのです。
そのためiPS細胞の変異を防ぐことよりも、変異を起こしたiPS細胞を確実に取り除く方法や、正常なiPS細胞のみを提供するチェックシステムの確立に力を注ぎ、研究を進めています。
また、分化誘導した細胞内に未分化のiPS細胞が残っていないかどうかを確かめる方法、iPS細胞を目的の細胞に100%分化させる技術などについても、研究は進んでいます。
これらの方法を確立させることで、可能なかぎり安全なiPS細胞を作ること、提供できるようにすることが現在の目標です。

そのためiPS細胞の変異を防ぐことよりも、変異を起こしたiPS細胞を確実に取り除く方法や、正常なiPS細胞のみを提供するチェックシステムの確立に力を注ぎ、研究を進めています。
また、分化誘導した細胞内に未分化のiPS細胞が残っていないかどうかを確かめる方法、iPS細胞を目的の細胞に100%分化させる技術などについても、研究は進んでいます。
これらの方法を確立させることで、可能なかぎり安全なiPS細胞を作ること、提供できるようにすることが現在の目標です。
