立命館大学理工学部電気電子工学科 教授 瀧口浩一先生インタビュー「光信号の符号化・暗号化/復号化技術と高セキュリティ・低消費電力な光通信の実現」(第1回)
通信の暗号化は、すでにさまざまな技術が使われていますが、それらは光通信には使えないのですか。
一般的に使われている暗号化技術は、電子回路を用いています。技術が進歩して処理速度は上がっていますが、課題が2つあります。
ひとつは、光信号の速度増加が進むと電子デバイスでは対応できなくなること。
もうひとつは、処理が高速になればなるほど、電子回路は消費電力が上がることです。
光信号の暗号化をできるだけ光領域のままで実行できれば、高速化・省電力化の両方が実現できます。そこで今回、バランス受光器と強度変調器を用いた光排他的論理和回路(光XOR回路)の研究開発に取り組みました。
ひとつは、光信号の速度増加が進むと電子デバイスでは対応できなくなること。
もうひとつは、処理が高速になればなるほど、電子回路は消費電力が上がることです。
光信号の暗号化をできるだけ光領域のままで実行できれば、高速化・省電力化の両方が実現できます。そこで今回、バランス受光器と強度変調器を用いた光排他的論理和回路(光XOR回路)の研究開発に取り組みました。
XOR回路とは何ですか。
もし送信の途中で何者かによって情報が盗まれてしまっても、符号化に使った信号が分からなければ、データは復元されず、情報は漏洩しない、ということですね。
そうです。符号化信号を使って処理をすれば復元できるというのが、XOR回路の性質です。また、万が一、符号化信号が第三者に漏れたとしても、処理のタイミングを完全に一致させなければ復元はできません。
処理のタイミングというのは?
なるほど、復号にはいくつもの条件が必要になるのですね。その光XOR回路は、もう実現しているのですか。
はい。ただし完全に光のみではなく、部分的に電子デバイスを使っています。
P1、P2が入力部分です。片方から情報の信号を、もう片方から符号化のためのランダム信号をバランス受光器に入力します。
そして符号化されて出力された電気信号を、アンプで増幅させて、強度変調器に送ります。入力した信号、つまりP1とP2が同値のときは「0」、異なる値のときは「1」を出力するよう、変調器の動作条件を設定します。
P1とP2は入力光信号で、強度変調器からの出力Pも光信号ですが、受光器と変調器の接続には、アンプ(増幅器)と電気配線を使った電子回路を用いています。
本当は、光デバイスだけでXOR回路を構築することが理想です。非線形光学効果という現象を利用した方法がすでに研究されており、論文も出ていますが、実用化には至っていません。
P1、P2が入力部分です。片方から情報の信号を、もう片方から符号化のためのランダム信号をバランス受光器に入力します。

そして符号化されて出力された電気信号を、アンプで増幅させて、強度変調器に送ります。入力した信号、つまりP1とP2が同値のときは「0」、異なる値のときは「1」を出力するよう、変調器の動作条件を設定します。
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光XOR回路中の強度変調器の動作条件 | 光XOR回路の動作確認実験結果 |
P1とP2は入力光信号で、強度変調器からの出力Pも光信号ですが、受光器と変調器の接続には、アンプ(増幅器)と電気配線を使った電子回路を用いています。
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バランス受光器と強度変調器を用いた光XOR回路 |
本当は、光デバイスだけでXOR回路を構築することが理想です。非線形光学効果という現象を利用した方法がすでに研究されており、論文も出ていますが、実用化には至っていません。