国立情報学研究所情報社会相関研究系研究主幹・教授 曽根原登先生インタビュー「ユビキタス情報社会における高度サービスとプライバシーの両立を実現する新たな匿名化手法と漏えい防止手法の確立」
(第1回)
そのための手立てが何かありますか?
個人情報に関して自らの意思を表示できるドナーカードのようなイメージでしょうか。
はい。このIDデータコモンズにより、個人情報の保護とデータの利用を両立させるための社会データ基盤を作ろうという提唱です。ただし、こういう物を作っても災害時だけ活用させるというのは難しいですから、平常時から使って慣れておく必要があるでしょう。
私は、これからの社会は「サイバー・フィジカル融合社会」になっていくと思います。メガネ型情報端末を身につけ、いつどこにいてもすぐサイバー空間にアクセスでき情報を得ることができるような社会です。
私は、これからの社会は「サイバー・フィジカル融合社会」になっていくと思います。メガネ型情報端末を身につけ、いつどこにいてもすぐサイバー空間にアクセスでき情報を得ることができるような社会です。
そうなると私たち一般市民も、どこまで情報を開示し、どこを隠しておくべきなのかということを自分自身でしっかりと考えておく必要がありそうですね。
そのためにも私はIDデータコモンズを中心とした個人情報の保護および活用基盤に関する研究を進める必要性を強く感じているのです。災害時など特別な場合や実世界における特別な場所でのプライバシー情報保護活用基盤の構築を日本学術会議に提案しています。災害時など特別な場合、プライバシー情報保護活用基盤は、行政や民間と個人のライフログデータを連携させることができ、ライフログ利用が自律的に地域分散で判断処理できる情報システムです。一方、ショッピングモールなど特別な場所では、プライバシー情報の中でも人間の内面的な情報(趣味、嗜好、行動傾向、購買傾向など)を積極的に開示や利活用ができるプライバシー情報保護活用基盤として構成できます。この研究には、日本学術会議のマスタープラン2014(計画番号138 学術領域番号25-10)として採択されました。
では、今回のセコム科学技術振興財団での助成研究は、その第一歩となるものなのですね。
セコム科学技術振興財団から、研究費をいただけたことを深く感謝しております。本研究成果は、災害時に特定の地域に対して、被災者のプライバシー情報を積極的に開示するなど利用者のプライバシー情報開示を利用者自身が制御できる社会データ基盤の構築は、時空間におけるプライバシー情報の保護活用という、新しい情報流の萌芽となるものと確信しております。