大阪大学基礎工学部 教授 西田正吾先生インタビュー「広域災害に対応する理想的なシステムとは」


反応はどうでしたか?

 実験については、災害ボランティア推進委員会に協力いただいて行いましたが、マッチング機能については、コーディネイタの経験などに左右されないため、高い評価が得られました。

個人の経験に左右されずに、適切な人材の配置が行われたと・・・

 はい。他にも意外な感想がありました。実は、災害地では被災者だけが救済の対象になるわけではありません。被災地に入ったボランティアの人は、肉体的にも精神的にもかなり疲労するといわれていますが、ボランティアの人同士がSNSを使って自発的に交流を始めたため、このシステムはボランティアの人へのメンタル面のフォローにも有効であることが確認できました。また、ボランティアのマッチングだけでなく、物資の調整に使いたいという意見ももらいました。

問題点はありませんでしたか

 一方で、高齢のボランティアの方が、パソコンに情報を入力しにくいなどの問題点も明らかになりましたので、ユーザインタフェースを改善する必要があると思います。

「臨機応変な対応の支援」についてはいかがでしょうか。

 被災地が混乱する原因には、「意思決定者が災害現場の現状況を直接把握できないこと」と「意思決定者が災害現場へ直接指示できないこと」の2つがあると言われています。これを解消するためのツールとして、光路裸眼可視可能レーザープロジェクタ・カメラ付き半固定設置小型端末を開発しました。この装置にはカメラや各種センサーが付いているので、意志決定者が直接、現場の様子を把握することができます。

各種センサーというのは

 温度センサーなどです。装置の近くで火事が発生していることなども把握できます。

では火事が発生したとして、どのような指示がだせるのですか?

 レーザープロジェクタを使用します。たとえば火災時の避難誘導などにおいて、プロジェクタから、矢印の図形を避難路の迷いやすい部分などに写しだすことで、正確な指示を出すといったイメージです。

最後にまとめをお願いします

 誤解のないように申し上げますが、いまお話した3つの機能は、コンピュータや最新の機器を使って、災害時の支援を機械により自動化しようという発想ではありません。今回の研究はあくまでも「人」の意志決定を支援するものです。災害現場において、最終的に重要になるのは「人」です。いくら優秀な人でも、大量の情報の中から、本当に必要かつ正確な情報が入手できなければ、正しい判断をくだすことはできません。いま求められているのは「人」を活かすシステムだと思います。

長時間にわたり取材へのご対応、誠にありがとうございました