岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 教授 西堀正洋先生インタビュー 「予防医学的な健康状態把握のための方法確立」(第2回)


脳梗塞のような生活習慣病や敗血症は、HMGB1を標的にしたり、HRGの補充で治療できるのに、新規DAMPsを同定する意義はあるのでしょうか。

 確かに、HRG-HRG受容体系の活性化によって生活習慣病を予防することを目指していますが、ここでトレーシー教授の話を思い出してください。
 もともと“核内機能を持つタンパク質”としか認識されていなかったHMGB1に“炎症を媒介する機能”が見出されました。今回のDAMP候補にしてもそうで、新規DAMPsを解析することは、まだ発見されていない物質・機能を見出す可能性があるのです。ひとつの研究にこだわらず、常に新たな可能性を追い続けることが、新薬の開発に繋がると考えています。

それでは、後進の研究者の方に対するメッセージをお願いします。

 セコム財団の研究助成金は金額が大きいにもかかわらず利用がしやすく、研究者にとって大変ありがたい助成金です。若手の方々は申請を躊躇するところがあるかもしれませんが、研究はトライアンドエラーの繰り返しです。全ての研究が成功する人はいないでしょう。5回、10回失敗しようとも、そこで諦めたら終わりで、チャレンジしないことには成功はないのです。新分野にチャレンジする姿勢を忘れないでいただきたいと思います。

文明は後戻りすることはできず、私達の豊かな生活と引き替えに、生活習慣病は現れました。先生のご研究は、それすらも予防する可能性が見えてきました。豊かな生活と健康が両立することができる時代は、すぐそこまで迫っているといっても過言ではありません。長時間のインタビューにご協力いただきありがとうございました。