岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 教授 西堀正洋先生インタビュー 「予防医学的な健康状態把握のための方法確立」(第2回)



本研究の研究成果として「HRGの受容体同定」を挙げておられますが、血中HMGB1-HRGのバランスが正常になることで好中球が正球化されるなら、受容体を同定する必要があるのでしょうか。

 「好中球をHRGに浸すことによって元通りになる」と、カップ麺にお湯をかけるイメージをされているようですね。浮き輪をイメージしてください。浮き輪を膨らませるためには、ただ空気を浮き輪に吹き付けるのではなく「空気の吹き込み口」を探し、そこに空気を入れる必要があります。好中球とHRGについても同様で、特定の好中球の受容体にHRGが結合することによって正球化されます。
 HRG受容体を同定したことによって、HRGの生体内での機能をより深く理解する糸口を掴むことができました。今後は、好中球や血管内皮細胞のみならず、他の機能調節についても調べることが可能になります。

今回明らかになった「好中球を正球化する」といったようなHRGの新しい機能を、他の細胞でも研究されるということですね。

 その通りです。また「生活習慣病を引き起こすDAMPsがHMGB1のみではなく、他にもあるかもしれない」とも考えています。つまり、新規DAMPsの存在です。
 今回の研究では、新たに生体内酸化ストレスによって生じる有機化合物(過剰に生じた活性酸素によって体組織が酸化され、発現する)が、新規DAMPsではないかという評価をしました。その有機化合物に対する単クローン抗体が、マウス敗血症モデル、ラット脳梗塞モデルで抑制活性を見出したのです。これからさらに詳しい調査を続け、DAMPとしての特性を明らかにしていきます。