芝浦工業大学 建築学部建築学科 教授 村上公哉先生インタビュー「大災害時ターミナル周辺地区および地下街の安全安心対策としてのオフサイトセンターの実証研究」(第2回)


エリア単位での防災ということで、今回はBCD電源システム、BCD情報システムについてもさらに研究を進められたそうですね。

 はい、まずはBCD電源システムからお話します。
 BCD電源システムでは、基本計画の作成、次に非常時に施設で必要となるエネルギー需要を調査しました。
 また、東京駅前日本橋・八重洲地区をモデル地区として、BCD電源システムの廃熱を地域冷暖房システムの熱源に利用した、システムシミュレーションを実施しました。

廃熱を空調に利用するということは、日頃は省エネ効果が期待できますね。

 現状システムと比較して、省エネ効果は約30%と推定されました。
 また、基本計画としてBCD電源システムの高効率発電機の容量を計算したところ、モデル地下街の夏期ピーク電力の約52%、冬期ピークの約78%を賄えることがわかりました。
 準備研究段階にて、平常時の電力需要に対して6割の電力があれば非常時に対応可能という結果を得ており、本研究で提案する既存地域冷暖房システムと連携したBCD電源のバックアップ効果は有効であると考えられます。

電源が予定通り機能すれば安心ですが、大災害時はバックアップ電源すら機能しないことも考えられます。電源が機能しない場合、地下街はどういった様相になるのですか。

 非常時ですから、起こりうる最悪の滞在状態を把握しておくことも必要です。
 そのために、空調需要の基礎調査も行いました。
 空調や換気ができない最悪状態を想定し、まず、地下街の非空調時における温熱環境実測と、地下街の非空調時の温熱環境下での睡眠時間および睡眠の質、滞在時の疲労蓄積に関する被験者実験を行い、地下街の非空調時における帰宅困難者の受け入れの可能性について評価しました。

実際に地下街で寝泊まりされたのですか。

 こればかりは、一時滞在者と同じ環境状況を体験する必要があります。
 一種の被験者を用いた実験ですので、倫理審査など、調査に至るまで苦労はありました。
 地下街の7カ所において、温度・湿度・グローブ温度・床表面温度を計測したところ、夏期は冷房が十分に稼働できなくとも滞在できる可能性はあると考えられます。睡眠実験においては、自律神経機能の多少の低下が見られたものの、すぐに命に別状がある、ということもありませんでした。

確かに夏なら、ある程度どうにかなりそうなイメージがあります。しかし冬期は、空調が使えないということがかなりのネックになりそうですね。

 はい。「構造的被害がなくても、空気温湿度が外とほとんど変わらない環境になる」評価の現状では、これから冬期の環境状態を把握する調査をすることが重要です。