芝浦工業大学 建築学部建築学科 教授 村上公哉先生インタビュー「大災害時ターミナル周辺地区および地下街の安全安心対策としてのオフサイトセンターの実証研究」(第1回)


やはり水やトイレの問題でしょうか。

 水やトイレはもちろんですが、何よりエネルギーインフラの問題が大きいです。
 何千人もの人が3日間滞在することを想定すると、例として電力やトイレを使用するための雑用水の確保などが必要になります。しかし、多くの施設が非常時の電源は半日程度しかもたないのが現状です。

電源が半日しかもたないということは、冬期なら暖房が使えず、夜には真っ暗になりますね。

 もし帰宅困難者を受け入れても、パニック状態になることは避けられないでしょう。
 災害時のターミナル駅周辺エリアの帰宅困難者対策をどうするか、という問題はこれまで議論され続けてきましたが、未だ確たる対策が得られていません。
 そこでまず本研究では、国や企業に地下街の防災における有用性を啓蒙することを目的として、地下街を含む周辺地区をBCD地区と位置づけ、そのエリア防災機能を支援するオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)が担う2つの機能に関する調査研究を実施しました。

BCD地区、またそれが担う2つの機能とは何ですか。

 BCDは国土交通省の事業のひとつで、都市機能が集積しエネルギーを高密度で消費する拠点地区です。災害時の業務継続に必要なエネルギーの安定供給が確保される地区を意味し「Business Continuity District」の略です。まさにターミナル駅周辺地区はこれに該当します。
 私たちの今回の研究ではバックアップ電源機能「BCD電源システム」と災害情報伝達機能「BCD情報システム」を調査しました。

BCD電源システムとBCD情報システムについて詳しく教えてください。

 まずBCD電源システムについてご説明します。
 大規模災害時に停電が発生した場合、各施設では保有する非常用発電機などで一部電源を確保します。しかし、災害時に重要な拠点施設や地下街の電源が何らかの事故によって喪失する場合や、また確保電源容量が不足する場合などを考慮すると、エリアとして各施設の必要電源をバックアップする電源機能を保有することが有効です。  
 そこで、オフサイトセンター内にバックアップ電源用の高効率発電機を設置することで、発電した電気を一時滞在施設となる建物や地下街に供給できるようになります。また、発電機から発生する廃熱を地域熱供給プラントに供給します。
 ターミナル駅周辺地区では建物の冷暖房に使用される冷水や温水などを造る地域熱供給プラントが整備されており、廃熱を利用することでプラントのエネルギー利用効率が向上し、建物の省エネに役立ちます。