豊橋技術科学大学大学院工学研究科建築・都市システム学系 准教授 増田幸宏先生インタビュー「オフィスビルのBC(Building Continuity)デジタル支援装置の開発」


BC(Building Continuity)支援システムは高層マンションに対しても有効なのでしょうか

高層住宅の災害時の居住継続性の確保と日常生活への早期復帰は日本の大都市におけるこれからの安全・安心の社会構築に不可欠な要素です。東日本大震災は「超高層住宅難民」という問題を提起しました。本地区では、本システムの導入により、建物機能の継続性の応急診断を行い、速やかな復帰を可能とする建物の新たな統合管理を実現します。国内で初となる「LCP(Life Continuity Plan)」の策定と、その遂行を支援するBC(Building Continuity)支援システムの実装を通じて、災害時においても居住継続性を確保し、日常生活への早期復帰を支援するための様々な危機対応策の検討を進めています。

いま、一般の消費者がマンションを選択する場合、価格面や立地、オートロックや防犯カメラなどのセキュリティ面を重視して購入を決定する人が普通ですね。

 たとえ大地震に見舞われても、生命はもちろんですが、生活上の継続性を確保する仕組みを有していることが、マンションの大変大きな資産価値に繋がると考えています。 このように、これからは災害に強く、信頼される建物・都市が市場で高く評価される仕組み作りを併行して検討することが必要です。例えば保険や不動産鑑定等の仕組みと連携させることが考えられます。
BC(Building Continuity)支援システムの導入など、建物の信頼性を高める一連の取り組みが建物の価値を最大限に高め、そのことが新しい保険制度や新しい不動産ビジネスの創出にも繋がることが期待されます。そのようなよい循環を生み出すことに少しでも寄与することができればと考えています。

今後はどのような方向性をお考えでしょうか。

 まずは、現在進行中のプロジェクトを成功に導くことです。
それから、本研究で見い出しました、災害に強い建物を設計するプロセスそのものを「建物機能継続計画」として標準化したいと考えています。ISO(国際標準規格)における他の工学関連の設計・管理プロセスも参照しながら、災害時においても建物の機能を維持するための総合的な災害対策を推進するための検討項目とそのプロセスを標準化することで、BC(Building Continuity)支援システムの必要性が理解される機会を増やし、多くの建物で導入されることに繋がればと考えています。やるべき仕事はまだたくさんあると感じています。

これから助成を受け、研究を進めていかれる方へメッセージをお願いします

 個々の要素技術の研究は科学研究費補助金等で取り組むことができますが、社会の新しい仕組みを提案するような課題や、社会の問題を解決するために新たな枠組みで様々な技術や知見、関係者の融合を図るようなプロジェクト研究を積極的にご提案いただくと有意義ではないかと考えています。
またセコム科学技術振興財団の関係者の皆様には、採択後も研究開発を進める過程で様々なご配慮とご助言を頂くことができましたことは、私に取りまして大変ありがたいことでした。実は、BC(Building Continuity)という概念も、選考委員会の際に安田浩先生に御示唆を頂いたもので、その後の研究の方向性を大きく決定づけるものとなりました。私もセコム科学技術振興財団にご支援をいただきましたこの研究開発プロジェクトを通じて多くのことを学び成長させて頂いたと思っております。是非、使命感をもって、大きな枠組みの研究に積極的に取り組んで頂ければと考えております。

長時間のインタビューどうもありがとうございました。