豊橋技術科学大学大学院工学研究科建築・都市システム学系 准教授 増田幸宏先生インタビュー「オフィスビルのBC(Building Continuity)デジタル支援装置の開発」
地震対策として「ほとんど手つかずの領域」として危険視されているのがオフィスビルです。従来の対策の何が問題であり、今後はどのような対策を講じていくことが重要になるのか、この分野の第一人者である増田幸宏先生にお話をお聞きしてきました。
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先生のご専門についてお教えください

またその直後に地下鉄サリン事件がありました。都市の危機管理を考えることの重要性について認識をした原点です。いつか都市の安全と安心について自分なりに取り組んでみたいと強く思い、建築・都市環境工学分野を志す大きな契機となりました。
巨大システム・人工物(Built Environment)の典型としての大都市の計画、設計、制御、維持、管理方策はこれから科学・技術が取り組むべき大変大きな課題であると考えています(左写真参照)。
今回の研究内容についてお教えください
セコム科学技術振興財団の助成をいただいて進めた研究テーマは「オフィスビルのBC(Building Continuity)デジタル支援装置の開発」です。Building Continuityとは、「建物の適切な機能維持」を意味します。地震などの自然災害や停電などの非常時においても、重要な建物機能を維持・継続するために、センサーやモニタリング技術を最大限に活用し、重要な建物情報を一つに集約して、可視化・記録しながら、建物管理の現場スタッフや建物使用者を適切にサポートするシステムの開発に取り組ませていただきました。
開発されたシステムの特徴は何でしょうか。

BC(Building Continuity)支援システムは、災害時にもいかに需要な建物機能を維持・継続し、また効率的な復旧ができるかどうかに主たる目的をおいています。いま建物のどの部分に被害が生じていて、建物の重要機能を守るためにはどの情報に対して優先的に対処すべきかが一目瞭然になるように工夫されているのです。非常事態が発生してから経験や勘に頼って対処方法を検討するということでは、重要な責務を担う建物においてその説明責任を果たすことはできません。本システムが、これからの建物管理のあり方を大きくかえていくことになると考えています。
システムを通じてどのような情報を得ることができるのでしょうか。

そして、「建築コクピット」のデータを記録するのが情報記録装置である「Building Security Recorder(BSR:ビルディング・セキュリティ・レコーダ)」です。これは、飛行機のフライトレコーダのように、施設管理者と現場のやり取りから、各設備の状態など、建物のすべての情報が時系列に沿ってリアルタイムで収録されることになります。人間の判断内容や指示、オペレーションの記録まで含めた非常時の建物の使われ方に関する一連の状況を取得し、その記録を元に事後検証や保険の査定、次の建築環境・設備計画に繋げていくという新しい試みです。
災害が発生したとき、対策を施しているビルと、していないビルとでは、被災後の復帰に要する労力と時間が格段に異なってくるわけですね。
