東京大学先端科学技術研究センター 生命知能システム分野 神崎亮平先生 光野秀文先生 インタビュー「昆虫嗅覚センサー情報処理による匂い源探索装置の開発」(第2回)
では、セコム科学技術振興財団の助成研究による匂いセンサについてお教えください。
昆虫自体をセンサにするとは、奇想天外な発想ですね。

特定の匂い分子に対して、光って反応するセンサができたということですね。これなら、いちいち、ガを飼って、その動きを観察する手間が省けますね。
「センサ昆虫」、「センサ細胞」には、それぞれ用途があります。
Sf21細胞に、カイコガのフェロモン受容体の遺伝子を導入した例を紹介しましょう。カイコガのフェロモン受容体にはBmOR1とBmOR3の2種類があり、それぞれカイコガの性フェロモン、BombykolとBombykalを選択的に受容できることがわかっています。これらのフェロモンの名前はカイコガの学名Bombyx moriにちなんで命名されています。そこで、BmOR1とBmOR3をゲノムに導入したSf21細胞をつくり、BombykolとBombykalに対する反応を見てみました。図の上がBmOR1を発現したSf21細胞です。反応の大きさを色の変化で表していますが、Bombykolの刺激で反応しているのがわかります。下の図は、BmOR3を発現したSf21です。こちらはBombykalに反応しているのがわかります。グラフからBmOR1はBombykolのみを、BmOR3はBombykalのみを検出していることがおわかりいただけると思います。また、感度については、300nMという非常に低い濃度でも検出できることがわかりました。これはだいたい70ppbに相当します。フェロモンだけではなく、食べ物や花などの一般臭を受容する嗅覚受容体の遺伝子を発現させても、反応を見ることができます。従来の半導体センサや水晶振動体センサは応答時間が分単位であるのに対して、このSf21細胞を使った匂いセンサは13秒程度で応答が得られます。

Sf21細胞に、カイコガのフェロモン受容体の遺伝子を導入した例を紹介しましょう。カイコガのフェロモン受容体にはBmOR1とBmOR3の2種類があり、それぞれカイコガの性フェロモン、BombykolとBombykalを選択的に受容できることがわかっています。これらのフェロモンの名前はカイコガの学名Bombyx moriにちなんで命名されています。そこで、BmOR1とBmOR3をゲノムに導入したSf21細胞をつくり、BombykolとBombykalに対する反応を見てみました。図の上がBmOR1を発現したSf21細胞です。反応の大きさを色の変化で表していますが、Bombykolの刺激で反応しているのがわかります。下の図は、BmOR3を発現したSf21です。こちらはBombykalに反応しているのがわかります。グラフからBmOR1はBombykolのみを、BmOR3はBombykalのみを検出していることがおわかりいただけると思います。また、感度については、300nMという非常に低い濃度でも検出できることがわかりました。これはだいたい70ppbに相当します。フェロモンだけではなく、食べ物や花などの一般臭を受容する嗅覚受容体の遺伝子を発現させても、反応を見ることができます。従来の半導体センサや水晶振動体センサは応答時間が分単位であるのに対して、このSf21細胞を使った匂いセンサは13秒程度で応答が得られます。

応答の安定性能については、いかがでしょうか。
これら2種類のセンサ細胞を6ヶ月間冷凍保存した後、融かして培養をはじめ、10日後と2ヶ月後に、応答に違いがあるかを比較しました。その結果、いずれの日数を経過したセンサ細胞でも、応答する細胞の割合や蛍光の強度は冷凍前とは変わらず、有意な差は見られませんでした。このことから、センサ細胞は、長時間にわたって同じ性能で使用できることが分かりました。
今後は、様々な嗅覚受容体を発現させたセンサ細胞を作り、アレイ化したセンサチップを開発する予定です。これにより匂い物質の違いをセンサチップの応答パターンの違いとして検出することが可能になるでしょう。また、センサチップを小型化することでコンパクトになり携帯性が向上することから、これまでは計測が困難であった地点など、様々なシーンでの計測も可能になると考えています。
感度、選択性、応答時間、安定性、携帯性など改善していくことで、実用に近いレベルのセンサが開発できると考えており、高額の助成金をいただいたことに対する、ご恩返しになると思っています。

今後は、様々な嗅覚受容体を発現させたセンサ細胞を作り、アレイ化したセンサチップを開発する予定です。これにより匂い物質の違いをセンサチップの応答パターンの違いとして検出することが可能になるでしょう。また、センサチップを小型化することでコンパクトになり携帯性が向上することから、これまでは計測が困難であった地点など、様々なシーンでの計測も可能になると考えています。
感度、選択性、応答時間、安定性、携帯性など改善していくことで、実用に近いレベルのセンサが開発できると考えており、高額の助成金をいただいたことに対する、ご恩返しになると思っています。

具体的には、どのような方面での実用化をお考えでしょうか。

また、リアルタイムの匂い検出が可能になれば、家庭やオフィス、工場などで不審者が侵入したことを知らせたり、災害現場で埋もれた人を発見したりすることもできるかも知れません。
匂いの検出は今、犬が中心ですが、犬がおこなっていることを、このセンサでできるように研究を進めています。