東京大学大学院 医学系研究科加齢医学 教授 秋下雅弘先生インタビュー「地域における総合的な在宅医療福祉システムの導入とそれに対応する情報システムの開発」(第2回)


他の専門分野について知ろうとする姿勢が、大事なのですね。先生ご自身が健康を保つために普段から気をつけていることはありますか。

 週に3回、最低でも1回は、近くの総合体育館で泳いでいます。なかなか時間がとれないのですが、研究で煮詰まったときなどに1㎞くらい泳いでリフレッシュし、また研究室に戻って続きをします。また、自宅から病院までは徒歩35分くらいの距離なので、なるべく歩くように心がけています。

運動をしているときと、していないときでは、体の調子に違いはありますか。

 運動をしていないと、体重がすぐに増えてしまいます。食事にも気をつけていますが、夜に会合があると外食になり、どうしても栄養が偏りがちです。そのため普段の夕食では、揚げ物を一切食べないようにしています。朝はヨーグルトにアサイー等いろいろ足したりして、バランス良く栄養を取るように気をつけています。

適度な運動と、バランスの良い食事。まさに理想的な生活習慣ですね。

 準備運動をせずに急に全力で走ったり、体に良いからと同じものばかりを食べても、効果はありません。無理のない範囲で継続的に運動を続けること、なるべく多種類の食材を摂取できる食生活を送ることが大事です。
 高齢になって認知機能が落ちると、計画性を持って物事に取り組むことや、細かな調整が難しくなってしまいます。子ども夫婦や孫と同居している家の食卓には複数のおかずが乗りますが、ひとり暮らしではたくさん買っても余ってしまうので、価格が安くて量がちょうど良い「いつもと同じもの」ばかり食べるようになってしまいます。
 筋肉の衰えを防ぐためには、肉を食べなければなりません。骨を丈夫にするためにはカルシウムが必要で、体の調子を整えるにはビタミンやミネラルが欠かせません。それらを毎日、バランス良く摂取できる食生活をなるべく若いうちから身につけておくことが、将来のフレイルやサルコペニアのリスクを減らし、いきいきとした老後の実現に繋がると思っています。

超高齢社会に向けた医療・福祉・地域社会の連携のあり方や、いつか高齢者になる私たちがどのような準備をしておくべきか等、多くの発見がありました。これから10年の間に医療や介護の現場が、そして社会がどう変化していくか、しっかりと見つめたいと思います。長時間のインタビューにお応えくださり、ありがとうございました。