立命館大学理工学部電気電子工学科 教授 瀧口浩一先生インタビュー「光信号の符号化・暗号化/復号化技術と高セキュリティ・低消費電力な光通信の実現」(第2回)


この研究を進めるなかで、本来の目的とは異なる、意外な発見などはありましたか。

 この光デバイスは光信号の符号化・暗号化と復号化を目的に考案したものですが、最近、信号のフォーマット変換にも応用できることが分かりました。
 今の光通信は1タイムスロットあたり「0,1」という、1ビットの情報を送る方式が主流です。しかしこの光デバイスを使って信号のフォーマット変換を行えば「0,1」という2値の信号を、振幅レベル差を使った「00,01,10,11」の4値の信号に変換できます。このように1タイムスロットあたり2ビットの情報を伝送できれば、多くの情報を効率的に送受信できるようになる、つまり大容量化に貢献できます。
 基幹系では、位相情報、あるいは位相と振幅情報を併用して信号の多値化を行い、大容量化を目指す研究が進んでいます。しかしながら加入者系では、コスト面から振幅情報のみを用いる多値化が必須です。このフォーマット変換の研究も含め、本研究を通して得た技術を、ぜひ別の側面にも発展させていきたいと思っています。

それでは最後に、研究助成の申請を考えている研究者の方々へ、メッセージをお願いします。

 私がセコム科学技術振興財団の研究助成を申請したとき、実は、選考に通るとは全く思っていませんでした。大学での研究実績がなく、研究内容もどちらかと言えば分かりにくいものでしたから。しかし審査を通して研究の価値を認めていただき、高額の研究費を助成いただいたお陰で、研究が大きく進展しました。本当に感謝しています。
 審査員には、幅広い専門分野の、ひじょうに有名な方々が揃っておられます。そのため、自分の研究を多様な視点から評価していただけることも、大きな魅力です。アイディアをお持ちでしたら臆せず申請することをお勧めします。

 技術が進化し、この光デバイスが社会で広く活用され、今よりも情報の安全が守られるようになることを期待しています。
 長時間のインタビューにも関わらず、丁寧に分かりやすくお答えいただき、ありがとうございました。