早稲田大学創造理工学部 建築学科 教授 高口洋人先生インタビュー「建築物のレジリエンス評価手法の開発研究」(第2回)


今後の課題や展望について教えてください。

 従来はほとんど考慮されなかった建築設備のリスクについて、躯体や立地などのリスクと統合して評価する手法を確立できたことは、大きな成果でした。今後の課題は、この手法の精度を高めていくことです。
 精度を高める方法は2つあります。
 ひとつは、過去の地震における被害情報について詳細に調べ、被害発生の確率をより確かなものにしていくこと。もうひとつは既存の建築物を使った評価件数を増やし、実際のレジリエンス性能と評価結果を比較して、妥当性があるかどうか確認することです。
 また、建築保全センターとの共同研究で、この建物のレジリエンス情報を活用した「建築保全の格付け」の拡張を行っています。評価手法が具体的に社会貢献できると期待しています。

それでは最後に、これから研究助成に申請する研究者の方々へ、メッセージをお願いします。

 私は安全・安心を生み出す研究とは、文理融合の学際研究だと思っています。私は建築分野のエンジニアですが、この研究は経済学者や保険関係者など、他分野の専門家の方々に協力していただきながら進めています。他分野への理解に時間がかかったり、成果が見えにくいこともあります。そのせいか、重要性はかねてより指摘されながら、学際的な研究に取り組んでいる研究者は、あまり多くありません。
 しかし工学の力で社会を変えるためには、その技術が現在の社会経済の中でどう位置付けられるのか、どのような意味があるのか、しっかり把握しなければなりません。そのためにも、さまざまな分野との連携が不可欠です。このような学際的な分野の研究に、ぜひ多くの研究者が取り組んで欲しいと思います。

 多くの分野と繋がってこそ、社会に受け入れられ、広がることができるのですね。このレジリエンス評価手法が日本だけではなくグローバルスタンダードとなり、震災による被害が少しでも軽減されることを祈っています。
 長時間にわたるインタビューにお答えいただき、ありがとうございました。