東京大学地震研究所災害科学系研究部門 准教授 楠浩一先生インタビュー「安全・安心のための即時耐震性能判定装置の開発」(第2回)


さきほどネパールでの調査のお話がありましたが、国内だけではなく、海外への展開はありますか?

 海外にもこのシステムに興味を持っている研究者が多く、現在はペルーのリマと、トルコのイスタンブールに同じシステムを設置して、一緒に研究を進めています。海外で大震災が起こったとき、このようなシステムによって救える命は日本よりもはるかに多いため、積極的に導入を進めていくつもりです。
 また、地震発生時だけ役に立つのではなく、日常的に建物の劣化をセンサが感知してメンテナンスの時期を知らせるなど、設置するメリットの幅を広げられないか模索中です。新たなブレイクスルーを起こす必要がありますが、鉄筋コンクリート構造や木造構造、超高層や劣化など、幅広い分野の研究者を集めてグループを組み、挑戦しているところです。

データの活用やシステムの応用など、さまざまな可能性が広がっているのですね。

 いろいろ考えていますが、基本は「建物にシステムを導入して震災後の応急危険度判定の問題解決を図る」「システムの有用性を実証する」「データの活用方法を考える」、この3つを中心に研究を進めているところです。

それでは最後に、セコム科学技術振興財団へのご要望や、これから研究助成を申請しようとしている研究者に向けたメッセージをお願いします。

 研究助成審査で、多分野の先生の前でプレゼンテーションを行ったとき、ひじょうにさまざまな視点からのご意見やアドバイスをいただき、多くの新しい発見がありました。ぜひ今後も、この審査方法を継続していただきたいと思います。
 また、安全・安心というキーワードには、医療やICTなど、とても幅広い内容が含まれるので、これから申請をする方々は「この研究は防犯に関係しないから申請が通らないのでは」などと考えず、どんどん申請してほしいですね。


震災が発生する可能性が高い日本において、建物の安全・安心を確保することの大切さと、さまざまな技術が進化した現在だからこそ可能な方法がたくさんあることを教えていただき、建築や防災分野への興味が一層深まりました。
 長時間のインタビューにお答えいただき、ありがとうございました。