富山大学大学院医学薬学研究部(医学)内科学(第二)講座 教授 絹川弘一郎先生インタビュー「入退院を繰り返す心不全患者に対する重症化・再入院予防及びQOL改善支援」(第2回)

患者からしてみれば、より詳細な生体データが第三者に知られることになります。そのさい、患者のプライバシーについてはどのように考えておられますか。

 本格研究は、医療機関ごとに倫理委員会の審査を受けて実施しています。生体データは全て匿名化された上で収集・解析されるため、心不全テレモニタリングシステム上で患者の個人情報と生体データが紐づくことはありません。このように患者のプライバシーの保護には万全を期していますが、患者にできるだけ安心して過ごしていただくために、研究にご参加のさいには、プライバシーについての説明を適切に行っています。

本格研究を進める過程で、新たに判明したことはありますか。

 システム構築においては、生体データの自動収集化や、またサポート機能を充実させることによって、高齢患者でも無理なく使い続けることができるようになりました。またデータ解析においては、重症化予測に直接関与しないものの、ある患者の心拍数増加時の心電図から不整脈が発生していることがわかりました。入院時の検査では不整脈が確認されていなかったため、長期での心電図データの取得によって、短期間の検査では見落としてしまう病状を発見できる可能性がでてきました。これはペースメーカーなどの植え込み型デバイスでも可能ではあるものの、患者負担の少ない非侵襲デバイスでも同様の機能を果たすことができれば、大きな意義があるといえるでしょう。

心不全重症化検知予測アルゴリズムの構築が実現に近づいてきている、という解釈でよろしいでしょうか。

 現在は、心不全重症化検知予測アルゴリズムの構築において着目すべき項目を検討している段階です。具体的には、イベント発生患者とそうでない患者の生体データを比較し、違いが見られる項目の絞り込みや、絞り込まれた項目を組み合わせた相関分析などを行っています。これにより、症状増悪パターンを捉えることができる指標を見つけ出すことで、心不全重症化検知予測アルゴリズムの構築につなげたいと考えています。