神戸大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 深尾隆則先生インタビュー「自律型飛行船ロボットを用いた自動情報収集・提示システムの構築」(第2回)

深尾先生のようなビークルの自動制御の専門家が、回転型カメラを進化させたり、レーザで計測した画像情報から自分の位置を割り出していくという発想は、専門化が進んだ日本の学術界の現状からは、考えにくいことです。

 ありがとうございます。外国では当たり前のこのような学際的な研究は、日本では「かけ声」だけで終わっています。そこには専門化が進み学問の分野が細分化され過ぎている弊害があらわれていると思うのです。また、そのほうが様々な研究予算を申請し、取りやすいといった事情もあります。そのようななか私のような学際的な研究の申請を受けてくださったセコム科学技術振興財団にはたいへん感謝しております。

この研究を進める課題、問題点にはどのようなものがありますか。

 先ほども述べたように、回転型ステレオカメラで取得した画像や、レーザで計測したデータは、一旦、飛行船の記憶装置に蓄積されて、戻ってきてから画像の再構成がなされます。これを無線通信機を利用して、戻る前に作業を行えたらベターだと考えています。
  ただ、これには通信の専門の免許が必要だとわかり少々困惑しています。実験を行うような場所には、民家はほとんどありませんし、通信障害などが発生することは考えにくいのですが、お役所的には「免許が必要」とのことですが、せめて「大学など公的な機関が実験する」場合などに限定して許可して欲しいです。まさか私がそのような専門の勉強をする時間はとれませんし、研究室の学生を一人選んで取得させても、卒業されればそれまでですから…。

最後に、将来的な構想をお聞かせください。

 「大災害はいつ訪れるかわからない。そこに予算は充てられない」という理由で、このようなシステムの導入を見送る自治体などがあります。東日本大震災のようなものでも、起こった直後は「たいへんだ。準備をしておこう」という意識を持ちやすいものですが、時間とともに薄らいでしまうからなんですね。そこで、平常時には自動運行の飛行船を広告用途で利用してもらうなど、別の対応策をいま模索しています。
  また、将来的にはこのシステムで得たデータをGIS(地理情報システム)にも統合していきたいと考えております。地図上のレイヤー(層)をクリックするだけで、その土地の被害状況などの画像が手に入ればひじょうに便利になります。

2回にわたる長時間の取材、ありがとうございました。