北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授 赤木正人先生インタビュー「災害時に必要な情報を音声により確実に伝える」インテリジェント避難誘導音声呈示システムの研究開発(第2回)


黄色い丸の部分は、了解度は高いがかなりわずらわしい、図書館でパチンコ屋での話し声を出している場合で、逆に青くなっている所は、パチンコ屋で図書館での話し声を出した場合と言えますね。

 パチンコ屋で、図書館の話し声は聞こえません。逆に、パチンコ屋で出すような声でも、音環境がパチンコ屋なら、多少了解度は低下しますが、そこまでわずらわしくはありません。これらの結果を考慮すると、音環境の状況にあった適切なアナウンス音声を用意することが必要であることがわかります。  

雑音残響環境下ごとの、適切なアナウンス音声のバランスが判明すると、音声変形アルゴリズム開発にどのように役立ってくるのでしょうか。

 本研究の課題は「音環境による了解度の低下を見越して呈示音声を変形し、理想的な聴取音声を実現する」ことです。今回、雑音残響環境下での音声アナウンスの了解度についてのデータを高い推定精度で取ることができました。ですので、環境による了解度の変化を高い信憑性で把握できるでしょうし、呈示音声の適切な変形、ひいては音声変形アルゴリズム開発の大きな足がかりとなりえるでしょう。

もてなしドームでの実験は、環境による了解度の低下のデータを取る上で、有意義なものになったということですね。これからの研究はどのように進めていかれますか。

 取得したデータから了解度向上のための音声変形規則を検討し、変形ルールを生成、そこから変形音声の作成ツールを構築します。ここまでは平成29年度までには実行予定です。平成30年度には、システムの概要を構築し、実験室での性能評価を経て、システム試作機の作成およびフィールドテストを実施します。

それでは最後に、セコム科学技術振興財団へのメッセージをお願いします。

 セコム科学技術振興財団様の助成金は、寄付金に近い形でいただけるので、大型であるにも関わらず非常に使い勝手がよく、大変助かっています。これからも審査員の皆様の期待にそえるよう、頑張って参りたいと思います。

「環境音があろうとも聞こえる音声を作成する」という画期的な研究のお話を聞くことができ、
音声を活用した防災分野への興味が一層深まりました。
長時間のインタビューにご協力いただきありがとうございました。