愛知学院大学 経営学部 経営学科 准教授
はい。本研究の目的は「良い成果を出すチームの条件」を見つけることではなく、「チームの信頼が醸成される条件」の解明です。2年かけて12チームの動的データと、アイデアに対する外部評価、アンケートおよび対面での聞き取りデータを収集して「このような状態になれば、チームの相互信頼感が高まる」という実例を示すことができました。
ただし、これはあくまで一つのモデルです。事象や因果関係の概念図を変更すれば、ベイジアンネットワークは異なる結果を示すでしょう。今後は新たなモデルを構築し、さらに精査していくつもりです。
今回、私は8カ月間の製品開発プロジェクトにおけるチームワークを観測するという、実践的な研究の機会を得ることができました。この好機を生かすため、学生たちには「整えた環境」ではなく、可能な限り「自然な環境」でプロジェクトを進めてもらうことに注力しました。
そのため、学生が各々に使用しているパソコンのカメラやマイク、ネットワーク環境の不具合などにより、動画や音声が途切れたり、エラーが発生することもありました。大変でしたが、そのぶん貴重なデータが得られたと思っています。
以前は発話量を中心に研究を進めていましたが、もっと研究を発展させたいと思っていたときに、このチームワーク科学分野での公募が開始されました。幸運にも採択していただいたおかげで、笑顔やうなずき、静かな間など、研究の範囲を大きく広げることができました。
チームワーク科学は新しい学問領域です。そのため3年前は、私も他の先生方も、試行錯誤の状態でした。ですが、毎月のオンライン研究会と、半年に一度の研究発表で意見交換を重ねるうちに、徐々に課題やデータの扱い方、手法などが整理されていきました。
この分野の第一人者になろうとしている先生方と、3年かけて一緒に作り上げてきたものがあります。2024年5月12日に開催されたシンポジウムは、まさにその結晶でした。かけがえのない機会をいただいたこと、心より感謝しています。
時代が変われば、研究すべき内容も変化していきます。しかし、新しい領域に挑戦したいと思っても、研究費の確保が大きな壁になったり、一人で研究を進めることに限界を感じたりすることもあるでしょう。
セコム科学技術振興財団の研究助成は、研究費の支給はもちろん、他の研究者との交流から、予想していなかった発見や成果を得ることができます。ぜひ挑戦してみてください。