
立命館大学 情報理工学部 教授
「自動運転車専用車線に、人間が運転する車が紛れないようにするためには、どのような法律が効果的か」という検証であれば、可能です。
自動運転車の普及のように、緊急性はないものの、近い将来起こりうる事象について多くの検証を行い、社会の急激な変化に備えることはとても重要と考えています。ケーススタディの蓄積があれば、新しい技術が生まれても速やかに対応できるでしょう。
必ずしも常日頃から意識している、というわけではないと思います。どちらかと言えば、自分がやりたいこと、成し遂げたいことのビジョンや理想を持ち、便利さ・快適さを追求している研究者のほうが多いはずです。
ただし「便利だと思って使っていたものから、いつの間にか悪影響を受けるようになっていた」という事態を避けるために、自分が取り組む研究の倫理的問題や、社会への影響に対する責任に関する認識は高まっていると思います。開発しておきながら、その結果には何の責任も持たないというのは、研究者としてあり得ないでしょう。
先にご説明したように、私はコンピュータに対して「人間が難問に直面した時に、参考意見を出して意思決定を助けてくれるツール」というイメージを抱いていますが、どれほど合理的であっても、人間の法律を無視した助言を与えることは許されません。そうした意識に基づいて、法規範を扱えるシミュレーションを研究しています。
領域代表者である藤垣裕子先生にご指導を受けた方から、この助成制度について教えていただきました。また、知り合いの八槇博史先生(東京電機大学情報環境学部教授)が助成を受けていたという事実にも背を押され、応募を決意しました。
社会的に意義あるテーマと自負していますが、やや実装寄りの内容が領域に適合するか確信がなく、審査に合格できるかどうか、とても不安でした。採択通知が届いた時は、とても驚きましたし、嬉しかったです。多額の助成金は、ソフトウェアの開発費や購入費に使わせていただきました。研究が大きく前進したこと、本当に感謝しています。