横浜国立大学大学院環境情報研究院 教授 松本勉先生インタビュー「次世代IT社会に求められる新機能暗号とその性能評価」(第2回)


新機能暗号技術の実用化には、ソフトウェア実装よりもハードウェア実装が圧倒的に有利であることが、よくわかりました。今後のご研究は、どのように展開されるのでしょうか。

 より優れた新機能暗号方式の開発を目指します。また、FPGAによる回路設計をさらに洗練するとともに、ASIC(application specific integrated circuit:特定用途向けの集積回路)を実装した場合の性能について調査を行う予定です。本格研究の最終年度には、次世代IT社会の健全な発展に有益と見込まれる新機能暗号方式のハードウェア設計と性能評価を行いたいと思っています。
 今回の説明ではデータセンタなど情報の処理を行う側で新機能暗号の効果的な実装を主な対象にしましたが、将来的にはこれらの技術を、フィールドで情報を発信したり制御を行なったりする個々のデバイス、つまりIoTネットワークの末端機器の部分の強化に応用することも考えています。

それでは最後に、セコム科学技術振興財団、またはこれから研究助成を申請する若手の研究者に対して、メッセージをお願いします。

松本勉先生 今回、寄付金という形で研究助成金を受け取ることができ、たいへん助かりました。とても使い勝手がよい仕組みで、もしも申請が通らなかったら複数の大学等で進めているこの研究はうまく形成できなかったと思っています。おかげさまで研究は極めて順調に進み、ハードウェアの本格的試作を行うプロジェクトの形成にも繋がっています。
 また、大きなプロジェクトでは、他大学や外部機関の先生方と会い、意見交換をする機会が増えます。そのような環境下で大いに刺激を受け、「この研究を続けたい」と大学院博士課程に進学する学生も増えてきました。ハードウェアセキュリティの研究会もでき、若手研究者の育成が進み、研究グループのモチベーションも上がっています。
 なお、「一般研究助成制度」は今年から、大学共同利用機関法人や国立研究開発法人の研究者も対象に含まれるようになったため、大学以外を含む組織で構成された大きなプロジェクトであっても、問題なく申請できるようなったとのことです。もし申請を迷っている方がいましたら、ぜひ思い切って挑戦してみてください。

現在の暗号技術の課題と展望を含め、専門性の高いご研究内容について丁寧にお教えいただき、
ありがとうございました。