東京科学大学 環境・社会理工学院 融合理工学系 エンジニアリングデザインコース 助教
当初、誰がどのくらい話しているのかを自然言語処理によって可視化することを目標としました。実際に会話を録音してデータ処理することで、計画していた会話の可視化には成功しました。しかし、この方法では話の内容を考慮していないため、雑談も含めてすべて反映されてしまいます。発話の解析という本来の目的を達成するには、量的な可視化だけでは不十分なことに気づきました。
そこで今新たに、発話の中に現れる「心理的不確実性」に着目しています。話者が不確実なことを話すときは、「かもしれない」や「だろう」といった不確実性を示す言葉が発話に入ってきます。このようなフレーズを拾っていくことがチーム状況の可視化につながると考え、実験を進めています。この試みが成功すれば、単純な発話の要約から脱却して、エッジが立った見せ方が可能になるため、新しい流れが生まれると期待しているところです。
応募したときは、ちょうど自然言語処理に関する研究を立ち上げようとしていたところでした。そのため、このトピックに関しては大きな実績がありませんでした。それでも研究の方向性を評価していただき、立ち上げをサポートしていただいたこと、とても感謝しています。
定期的に開催されたオンライン研究会では、錚々たる先生方からコメントやアドバイスをいただけることが非常にありがたかったです。同じ分野の研究者の進捗報告からは、研究手法や、実験から得られる成果などを知ることができ、自分の研究を具体的に計画するうえで大いに役立ちました。
テクノロジーの進歩に伴い、私がこの分野を志した頃とは比べものにならないほど様々な可能性が広がっていることを実感しています。技術開発を追求しておられる方にとっては、本人が想像もしていないような使い方で、技術が社会に実装できる可能性があること、そして、マネジメントやチームの研究されている方にとっては、技術の力で想像以上にいろいろな問題が解決できることを感じていただけると嬉しいです。
技術が社会に実装され、社会に必要な技術が技術研究のトピックになる。そんなサイクルが回っていく世界を目指して、日々研究に取り組んでいます。