中央大学 商学部 助教
目標は、この振り返りシートを用いて、さまざまな企業に活用していただける「チームワークの健康診断ツール」に仕上げることです。
熱中対話の長さだけではなく、表情や感情、質問や反対意見の数など、複数の側面から「現在のチームワークの状態」を定期的に測定し、チームメンバーや上司がその変化を把握しながら、常により創造的なコミュニケーションを目指していく──そのようなツールになればと考えています。
当初は心電や発汗などの生体データも指標に含めようと思っていましたが、この診断を普及させるためには、特定のデバイスを装着するといった手間を省き、普段と変わらない活動の中で手軽にいつでも診断できる、という形が望ましいと考えました。
チームワーク科学分野が発足したとき、堀井先生からこの助成制度を教えていただき、驚きました。募集要項を見て「自分が応募してもいいのか?」という不安はありましたが、申請して良かったと思っています。
この研究を始めた頃、熱中対話の定義は自分なりに明確にしていましたが、堀井先生が月に1回実施する勉強会に参加するうちに、その定義が広がっていくのを感じました。
熱中対話がアイデア創出と凝集性に与える影響や、熱中対話を促す振り返り手法は、実験から明らかになりました。私のような工学系の研究者は「問題を解決する手法が確立できれば良し」と考えがちですが、他の助成研究者の先生方からは「なぜこのような結果が出たのか」、「知識創造活動を促す熱中対話という概念を、この指標で正しく測定できているのか」など、因果関係や定義に関するご意見をいただきました。
学際的な研究では、他の研究者からフィードバックをもらうことは容易ではありません。助成金はもちろん、素晴らしい機会をいただけたことに、とても感謝しています。
学際的な研究とは、全く異なる複数の分野の、それぞれの一部分を融合させて新しい分野を生み出す、というイメージです。そのため、私はいくつもの学術分野の真ん中、本流ではないところでキャリアを積んできました。
そのような部分にセコム科学技術振興財団が手を差し伸べてくれるのは、とてもあいがたいことでした。おかげさまで実験のやり方など、手段の幅がぐんと広がりました。学際的な領域で研究を続けている研究者には、ぜひ挑戦してもらいたいです。