チームワークが醸成する信頼〜ハイブリッド型PBLを手掛かりに〜
油井 毅 先生

愛知学院大学 経営学部 経営学科
准教授

助成期間:令和3年度〜 キーワード:デザイン思考 アントレプレナーシップ 製品開発 研究室ホームページ

2016年3月同志社大学大学院総合政策科学研究科技術・革新的経営専攻一貫博士課程修了。博士(技術・革新的経営)。2003年4月に岩谷産業株式会社に入社、2008年より常翔学園広報室、大阪工業大学ロボティクス&デザインセンター勤務を経て、2016年にNEDO特別講座「ロボットサービス・ビジネススクール」研究員を兼務。2018年に徳島大学高等教育研究センターの助教となり、2021年4月より愛知学院大学経営学部講師、2024年4月に准教授となり、現在に至る。

まずは、今回のご研究を始めたきっかけを教えて下さい。

コロナ禍でリモートワークが普及したとき、いくつかの企業に聞き取り調査を行い、リモートワークの実施において重視していることを尋ねました。すると、多くの企業から「信頼」という答えが返ってきました。

チームワークに関する先行研究では、信頼はオフィスでの自然な会話、たとえば仕事の合間や業務終了後の雑談などから醸成されるものと考えられていました。しかしリモートワークでは、そうした機会がなかなかありません。

そこで、これまで対面で醸成されてきた信頼が、対面とオンラインによるハイブリッド型PBL(Project Based Learning)でも生み出すことが可能か、可能である場合はどのような条件が必要かを明らかにするため、本研究を開始しました。

なぜオンラインのみではなく、ハイブリッド型を対象にしたのですか。

以前、デザイン思考ワークショップを「対面」と「オンライン」でそれぞれ4回実施し、発話量の計測からチームワークの比較を行いました。

すると、「オンラインよりも対面のほうが、会話が活発だった」「対面では6チーム中4チームに特定のクリエイティブリーダーを確認し、回を重ねるごとに他者への傾聴が増えた」「オンラインではクリエイティブリーダーが変化・分散した」という結果を得ました。クリエイティブリーダーとは、多様なメンバーと協働することでチームをリードし、創造的な結果をもたらす人物のことです。

対面とオンラインでこのような違いが出た理由については、さまざまな要因が考えられました。この結果をもとに、さらに中長期的に、発話以外の要素も定量化することで多面的に研究を進めるべきだと考えたのです。

オンラインではメンバーの顔が均等に表示されるため、対面よりも意見を均等に聞きやすい可能性が高い等、新たな発見があった

研究対象のハイブリッド型PBLの内容と、ご研究の内容について、まずは簡単に教えていただけますか。

2022年と2023年に、私のゼミに所属する学生が「Sカレ(Student Innovation College)」に参加しました。全国の大学のゼミ生でチームを組み、民間企業から提示されたテーマに基づいて商品企画を行うインターンカレッジです。

プロジェクトは、4月から12月までの8カ月間。私のゼミからは各年度6チームずつ、合計12チームで挑みました。幸いにも、2022年に参加した1チームの企画が高い評価を受けて総合優勝を果たしました。

この優勝チームを含めた12チームに、プロジェクト期間中にオンラインワークショップを3回実施してもらい、動的データからチームワークの状態を測りました。さらにチームメンバーが互いに抱いている信頼感について、8月と12月にアンケートおよび面談で調査をしました。

プロジェクト終了時、チーム間の信頼度には、ばらつきがありました。ワークショップにおけるどの要素が、信頼の醸成にどのように影響を与えているのか、その因果関係の解明を目指しました。

Sカレを通じた信頼の醸成

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