人間環境情報に基づく熱中症対策ウェアラブルICTシステムの社会実装
ロペズ ギヨーム 先生

青山学院大学 理工学部 情報テクノロジー学科

リスクの検知とフィードバック、いずれもユーザーに寄り添う開発をしておられますね。

ユーザー一人ひとりに、システムを「第三者の目」として活用してもらうことを目指しています。逆説的ですが、実は、このようなサポートシステムを使わないことが最終的な理想の姿と考えています。

サポートシステムの利用は、自分の状況を見返す機会になります。生体計測の結果を知り、このようなときにリスク通知が届いて、水分補給すると体調が改善する。その体験を繰り返すうちに、やがて、通知がなくても適切なタイミングで水を飲んだり、休憩したりできるようになる。それこそが人間にとって本当の健康ではないでしょうか。

システムの役割は、きっかけと適切な習慣作りであり、システムで学習したユーザーが自らリスクを避けられることが、最終的な目標

システムの社会実装の実現に向けて、今後どのような方針で進めていくのでしょうか。

システム全体の精度を上げる研究は、もちろんこれからも続けます。

一方で、ユーザーがどのような使い方をするのか、どんなフィードバックが効果的かは、実際に使ってもらわないと分かりません。今後は現実的な環境で利用データを集める機会を増やしたいです。そのためには協力企業や協力現場が必須です。このシステムの有用性に共感してくれて、長期的なビジョンを共有できるパートナーを探すことにも力を入れたいと考えています。

最後に、セコム科学技術振興財団の研究助成を受けられた感想を教えてください。

研究助成制度のなかでは金額が桁違いに大きく、様々な面で助けられています。

私の研究は人間を対象とするため、多くの被験者の協力が必要です。初めは研究室の学生でデータをとっていましたが、去年は公募して、これまであまり取れていなかった世代の男女からもデータを集めることができました。一般の人を被験者とする実験は、応募の管理や被験者への対応、実験の準備に時間がかかりますし、協力してくれる学生たちの負担も増えました。しかし、それらの活動を支える十分な予算があったため、安心して実験を進めることができました。

全体を通じて、私だけでなく、協力してくれる学生やスタッフの活動もサポートできる、柔軟性の高い助成金と感じています。システムの実用化に向けて大きく前進することができて、感謝しています。

これからは、現場で得られたデータを分析し、さらに使いやすいシステムや効果的なフィードバックにバージョンアップするという、いい循環をつくりたい

先生の開発された熱中症対策ウェアラブルサービスが社会実装され、多くの人の行動変容につながることを期待しております。お忙しい中インタビューにお付き合いいただき、ありがとうございました。