領域代表者
佐久間 一郎 先生

東京電機大学 研究推進社会連携センター総合研究所
特別専任教授

現在、医療技術の進歩により平均寿命は延伸することは一定の水準で達成できている。しかしながら治療の結果もたらされる生体機能の低下、副作用などにより慢性疼痛や種々の合併症など生活の質(QOL)の低下を伴うという現実も存在する。一方ウェアラブルデバイス、IoT技術の進歩により、これまでの医療の診断の多くに共通する時間的に離散的なサンプリングに代わり、生体情報の日常生活中での長時間連続計測することで新たな診断情報を得て適切に介入する生体医工学技術への期待も高まっている。またこれらの進歩により睡眠・運動などの日常生活行動が疾病の増悪にどのように関連するのかといったメカニズム研究もその進展がみられる。

また心不全からの回復過程においては適切な運動負荷を伴う心臓リハビリテーションを行うことで、望ましい心臓のリモデリング(リバースリモデリング)がもたらされることや、脳卒中発症後において適切な時期に適切な強度のリハビリテーションを行うことで脳神経系ネットワークの再構築がもたらされることなどが様々な医学研究により明らかになりつつある。

生体が本来備える回復機能を高めることは、特に慢性疾患からの回復には重要であるとともに、軽度の異常状態から正常状態への復帰能力の向上による予防医療としての意義を持つ。生活環境から与えられる刺激の制御や、生体への適切な刺激(物理的刺激、化学的刺激、情報的刺激など)による治療介入を通じて生体の回復機能~レジリエンス~を強化するための学理の構築と生体計測制御技術の開発が生体医工学の発展には重要となっている。

本研究では、(1)循環器系疾患、(2)生活習慣病、(3)脳卒中後のリハビリテーション医療を対象に、その疾患の増悪・疾患からの回復メカニズム、疾患により障害された機能の修復メカニズムに関する最新の知見に基づき、疾患の増悪をもたらす生体へのストレス因子の検出技術と、生体の回復能力の向上をもたらす人工的介入技術開発により、疾病からの回復力の向上や疾病に至らない異常状態からの回復を促進する新たな生体医工学技術の研究開発をおこなう。それにより薬物投与量の削減や、侵襲性の高い介入を低減できる医療の実現に貢献することを目指す。なお研究項目には生体適合性が高い体内埋め込み型の連続計測、介入デバイスなど、リスクベネフィットバランスの観点から許容される侵襲性をもつ生体計測・介入技術開発を含む研究が含まれることも許容する。また生体の情報を収集分析し、その結果に基づき介入を与える手段としてロボット技術を応用することも視野に入れる。

研究提案は医学研究者と工学系研究者の連名での提案であり、臨床的意義づけが合理的に説明可能であることが求められる。なお合理的な仮説の設定とその検証により、本研究を通じて当該生体医工学技術の原理的な可能性を明らかにする基礎的研究も含むものとする。