空中電磁探査データを用いた地震時斜面崩壊危険箇所および崩壊規模推定手法の構築と防止対策への適用に向けた実践的研究
野々村 敦子 先生

香川大学 創造工学部 創造工学科 防災・危機管理コース 教授

ドローン2機で観測する利点は何でしょうか。

送電線を地面に敷設する作業は人力で行うため、人が入れない場所には送電線を敷くことができませんし、測定もできません。しかしドローン2機で観測する場合、地面への電磁波の照射と二次磁場の受信を、それぞれのドローンで実施できるため、送電線を地面に敷設する必要がなくなります。つまり、人が入れないような山奥でも感知可能となるのです。

現在はまだ試行錯誤の段階で、テストフライトでは、場所によっては十分なデータがとれにくいという課題が見つかっています。

通常、山の斜面は木々が鬱蒼と覆っているため、うまく避けながら飛行しなければなりません。木々の高さの分、地面から離れて測定することになり、どうしても受信シグナルが弱くなって、うまくデータが取得できないケースが発生するのです。そこをいかにクリアしていくかが、今後の課題です。

特定領域研究助成に採択されて、どのようなメリットがありましたか。

助成金はもちろんのこと、非常に大きなメリットがありました。じつは「二次磁場の測定に、ドローンを使ってみてはどうか」と提案してくださったのは、領域代表者の金田義行先生です。これにより実験方法の幅を大きく広げることに成功しました。

ヘリコプターの代替としてドローンを使うという発想がなかった私にとって、全く新しい手法でした。先生からアドバイスを受けた直後から、早速その探査を実施できる会社を探したところ、ネオサイエンスという会社が、ドローンによる空中電磁探査技術を有していることが分かり、調査への協力を依頼しました。

これまでは限られた予算の中で、いかに費用を抑えて研究するかという窮屈な発想に陥っていたと思います。そのため、自分でデータを取ること、ましてドローンを活用するといった新たな手法はどうしても浮かんでこなかったのです。

ドローンを活用した調査方法が、研究を大きく飛躍させた。画像は1機での観測時

ドローンによる探査では、協力企業とどのように連携されているのでしょうか?

ネオサイエンス社長の城森様をはじめ社員の方々が、私の研究に真摯に向き合ってくださっています。とくに城森様は研究者気質をお持ちのかたで、「飛行速度のコントロールを工夫すれば、解決できるのでは」というような相談をしながらの調査ができています。観測器具の細かい設定などにも気を配ってくれます。 

課題は多いが、協力企業との試行錯誤によって着実に進んでいる

最後に、セコム科学技術振興財団やこれから応募を考えておられる研究者へのメッセージをお願いします。

この度、特定領域研究助成の防災分野である「最新科学技術を用いた自然災害の被害低減と強靱化」として助成していただき、研究者としての視野を大きく広げていただいたことに、深く感謝しています。

もちろん、金田先生とのご面談では、ときには厳しいご意見をいただくこともありますが、それは他ではいただけない貴重な指針として、ありがたく拝聴し研究に活かしています。

私たち研究者は他人に耳を貸すことなく押し進めてしまうことが普通ですし、領域代表者や選考員の先生方は、申請が通過しなければお会いすることすら叶わない存在ですから、今後応募される方にとっても、成長できる良い機会になるのではないでしょうか。

今回見つけた研究の種を、今後の研究にも大いに活かしていきたいと考えています。

特定領域研究助成の採択は、研究者として新しいチャレンジをするきっかけになった

ありがとうございました。先生のご研究が、これからますます発展されていくことを期待しています。