細胞間ネットワーク表現型解析法の開発と応用
太田 禎生 先生

東京大学 先端科学技術研究センター 准教授

ビーズを利用したフローサイトメトリーのシステムも開発しておられるのですね。

ライトシート顕微鏡と、マイクロ流体の技術を組み合わせました。画像の処理スピードや解像度を改善するために、手を替え、品を変え、毎秒2000細胞ほどのスピードで三次元細胞イメージングができています。

このようなプラットフォーム技術を導入して、光核酸バーコードを使った細胞解析を、 単位までスケールアップさせることを目指しています。プラットフォーム技術の開発の一つずつの過程に様々な技術が嵌め込まれており、振り返ると、いろいろな試行錯誤がありました。このように開発したプラットフォームを、横方向に展開する可能性が楽しみです。

三次元イメージングフローサイトメトリーシステムの概念図。音響波を用いて流れの中の細胞位置を制御し、流路を横切るライトシート光で光切断イメージングを連続して行うことにより、このシート光を通過した細胞の三次元画像を取得する

開発した解析技術の応用にあたり、免疫記憶と感染伝搬をテーマに選ばれたのはなぜですか?

何を対象にするべきかは、この特定領域研究助成におけるフォローアップの面談などの機会に、アドバイザーの先生方と何度も議論させていただきました。また採択後に、共同研究者の皆さんとも繰り返し議論を行いました。そのなかで、「感染の伝搬メカニズムを知りたい」「免疫の記憶を生み出す細胞相互作用とは」といった、細胞間の相互作用における現象を解明したいという生命科学上のニーズがあることがわかりました。

当初、私自身はそれらをターゲットには考えていなかったので、難しさを感じることもありました。それでも、今も勉強しながら開発を進めているのは、バイオロジーにおいて「求められていること」 にも応えたい、という思いがあるからです。先生方から率直なご意見やアドバイスをいただいて研究の方向性を修正できたことは、本当に貴重な機会で、ありがたいことでした。

生命科学の疑問に寄り添う技術を開発する上で、バイオロジストの方々とはどのように関わっておられますか。

バイオロジストの方々からは様々な要望やアイデアをもらい、意見交換とフィードバックを何度も重ねて、解析のプラットフォームを改良しています。求められていることを理解することは、真価を得るためには重要ですし、その先を技術で切り拓くための発想につながります。この特定領域研究助成では、採択された研究者どうしが意見交換する場を設けていただいており、生命科学に軸足をおいておられる研究者の方々と接点が持てることが大きな魅力です。

完成したシステムを活かしてバイオロジーの分野を切り拓いてもらえることが、開発者としての喜び