東京大学 定量生命科学研究所 分子神経生物学研究分野 准教授
もともと生物に興味があり、大学院からに後藤先生の研究室に入りました。当初は研究者になるつもりはなかったのですが、ちょうどエピゲノム分野が盛り上がり始めた時期で、神経幹細胞のエピゲノム制御に関する研究に携わる中で「この役割を明らかにしたい」という気持ちが大きくなっていったのです。
特別領域研究助成への応募を勧めてくださったのも、後藤先生です。
研究室の立ち上げには多くの資金が必要だったため、採択されなければ、ここまで研究を進めることはできませんでした。とくにニューロンの核をソーティングする機械は、この規模の研究室が所有するレベルのものではありません。初年度から自由に使える環境にあったことで、研究のスピードが飛躍的に上がりました。たいへん感謝しています。
研究費の助成はもちろん、他の研究者の方々との意見交換会や、面談で何人もの先生からアドバイスをいただけることもとてもありがたく、勉強になりました。とくに領域代表者の桜田先生からは、機械学習を用いた分類器の構築についてご提案いただきました。
エピゲノム情報の解析には様々な手法があり、手法によって結果が異なることがあります。たとえばニューロン老化におけるエピゲノム解析では、クリアな結果が出るまでいくつもの解析方法を試す必要がありました。
そうした試行錯誤をできるだけ少なくするために、取得したエピゲノムデータを入力したら「このゲノム領域でこのエピゲノム修飾が変化している」と回答してくれるAIを作りたいと考えています。
桜田先生のご提案でこのような新しい試みを始められることが、セコム科学技術振興財団の助成金の良い点の一つだと考えています。
脳のニューロンのエピゲノムは、わかってないこと、知るべきことが山ほどあります。10年ほど前に次世代シーケンサーが登場し、近年は少ない細胞数でゲノムを解析できるようになるなど、研究環境はどんどん良くなっています。
本研究を発展させることで、成熟しつつ盛り上がっているこの分野に、大いに貢献していきたいと思っています。