令和7年10月27日 令和7年度 一般研究助成 研究成果報告会および研究助成贈呈式を開催

令和7年10月27日(月)、東京・千代田区の帝国ホテルで、令和7年度一般研究助成の研究成果報告会および研究助成贈呈式が開催されました。セコム財団関係者約30名が参加しました。

当日は、上田理 代表理事・理事長代行の挨拶より開会し、最初に研究成果報告会が行われました。

(左)開会の挨拶をされる上田理 代表理事・理事長代行

セコム財団の一般研究助成は、安全で安心な社会の実現を目指し、多彩な専門家からなる選考委員会による幅広い視点のもとで審査を行っています。初めの1年は準備研究として研究の方向性を明確にし、その後の面接審査を経て、最長3年間の本格研究へと進むことが特徴です。

研究成果報告会では、令和3年度に新規採択され、これまで4年間にわたって研究を進めてこられた次の5件の課題について、研究代表者の先生より成果報告が行われました。

  • 阪本 卓也 先生(京都大学)「マルチレーダによる多人数の非接触ヘルスケア計測が拓く安心社会」
  • 原 英樹 先生(旭川医科大学)「感染症を重篤化させる特異的炎症の活性化機構と炎症記憶の解析およびその応用」
  • 小川 佳宏 先生(九州大学)「加齢による副腎由来ホルモンの不均衡に着目した骨粗鬆症の病態解明と早期診断法の開発」
  • 横田 裕輔 先生(東京大学)「次世代の高速海底地殻変動観測を実現するためのUAV海底観測システムの実証」
  • 三輪 空司 先生(群馬大学)「加振レーダによるRC部材の鉄筋可動性に着目した定量鉄筋腐食評価技術の革新」

報告をされる先生
(上段左から、阪本先生、原先生、下段左から小川先生、横田先生、三輪先生)

各先生の発表の後には、担当していた選考委員から温かいコメントがありました。会場からも質問が出て活発な議論が展開されました。

続いて研究助成贈呈式では、令和7年度に新しく採択された6名の先生方へ目録の贈呈が行われました。

  • 堀﨑 遼一 先生(東京大学)「安全、安心な社会実現に向けたコンピュテーショナルイメージングの展開」
  • 山名 早人 先生(早稲田大学)「準同型暗号と隔離実行環境の融合によるAIセキュリティの堅牢性・実効性の向上」
  • 塚崎 雅之 先生(昭和医科大学)「口腔がん早期検出・介入戦略の創出」
  • 小出 裕之 先生(静岡県立大学)「プラスチック抗体による中分子バイオ医薬の経口送達プラットフォームの創出」
  • 木村 俊介 先生(北海道大学)「ナノボディによるM細胞標的型粘膜ワクチン開発基盤の構築」
  • 越村 俊一 先生(東北大学)「海岸・海洋デジタルツインの構築と沿岸環境のレジリエンス向上」

目録の贈呈

報告会と贈呈式の終了後、会場を移して懇親会が開催されました。懇親会は佐々木信行 代表理事・理事長の祝辞から始まりました。

祝辞を述べる佐々木信行 代表理事・理事長(左)と黒田玲子 理事(右)

セコム財団の理事・選考委員長である黒田玲子先生からは、「本日の報告や贈呈を受けた課題からわかる通り、セコム財団ではさまざまな分野の課題を扱っている。これは設立者の言葉にある、安全・安心につながるものはきわめて広い分野にわたり境界領域をまたぐものである、ということを体現している。アイディアに対して出来ない理由を挙げるのではなく頑張って進めてほしい。それが人類のフロンティアを推し進めることにつながっていく」との激励のお言葉がありました。

参加者は異なる専門分野やバックグラウンドをもつ方々でしたが、第一線の研究者同士、すぐに談笑の声がいたるところから聞こえました。会場には新規採択された課題のパネルが展示され、活発な意見交換がされていました。

盛り上がっていた懇親会

懇親会では新規助成の研究内容を紹介したパネルが展示されました

また、会の最中に各先生から一言ご感想をいただきました。新規採択の先生からは「貴重なお金をいただくことになった。一生懸命進めていく」「研究者として独立したばかりで本当に助かっている」「報告者の皆様のようなすばらしい成果を報告できるよう進める」「現在研究室を立ち上げたところで経済的に心強く思っている」「海岸工学にかかるさまざまな問題をDXの枠組みの中で解決していく研究グループをつくり、広げていきたい」などと、これからの意気込みが聞かれました。

助成期間が終わり成果報告をされた先生からは「安全になれば安心だろうと考えていたが、安心ではない場合があることを選考委員の皆様に教えていただき、倫理面の研究も進めることができた」「2回に渡る研究室のたちあげに本助成金を使わせていただいた。そのおかげでシームレスに研究を継続でき、感謝している」「セコム財団設立者の話に非常に共感した。現在は海洋工学を専門としているが元は地震防災が専門であり、海域の地震防災は海洋工学が必須とのモチベーションがある」「毎年の審査で選考委員からコメントをもらい、それが研究の発展につながり感謝している」などと感謝と決意が述べられました。

最後に、上田理 代表理事・理事長代行が挨拶し、「今年から内閣府が研究セキュリティと研究インテグリティ確保に関する有識者会議を開催している。セコム財団では、本日のスピーチにもあったように『安全だからといって安心ではない、提案の研究方針はELSIや倫理の点でセコム財団としてどうなのか』という議論が頻繁になされており、まさに研究インテグリティの確保、科学に対するリスペクトを体現している。このような財団の助成を通して自由闊達に研究をしていただきたい」との言葉で懇親会が終了となりました。

COVID-19の影響で、成果報告をされた先生方は採択時に贈呈式がオンラインでの開催となり、一堂に会するのは最初で最後となりました。研究分野は違っても第一線の研究者が集まったということもあり、お互いに親交を深めて、将来の交流の可能性を広げる貴重な機会となりました。


(前列左から)黒田玲子 理事、佐々木信行 代表理事・理事長、上田理 代表理事・理事長代行と、(後列が)成果報告をされた先生

(前列左から)上田理 代表理事・理事長代行、佐々木信行 代表理事・理事長、黒田玲子 理事と、(後列が)贈呈を受けられた先生