令和7年5月29日 令和6年度 挑戦的研究助成 研究成果報告会および研究助成贈呈式を開催

令和7年5月29日(木)、東京・千代田区の東京會舘で、令和6年度挑戦的研究助成の研究成果報告会および研究助成贈呈式が開催されました。会場に来られない一部の先生のためにオンラインを併用したハイブリッド開催とし、セコム財団関係者約30名が参加しました。
当日は、上田理 代表理事・理事長代行の挨拶より開会し、最初に研究成果報告会が行われました。
セコム財団の挑戦的研究助成は、40歳未満の若手研究者による新しい領域開拓への挑戦を支援する研究助成です。研究の助成に加えて、研究の方向性の議論など、研究者の育成という面からも支援を行っています。
研究成果報告会では、これまで研究を進めてこられた以下の5件の課題について、研究代表者の先生より成果報告が行われました。
- 相馬 祥吾 先生(京都府立医科大学)「豊かな味覚体験を生み出すための末梢から中枢における神経基盤の全容解明」
- 鈴木 郁夫 先生(東京大学)「ヒト脳進化をもたらした遺伝子プログラムの探索」
- 岡崎 朋彦 先生(北海道大学)「統合的プロテオミクスによる細胞内翻訳後修飾制御機構の多層的理解」
- 大野 美喜子 先生(産業技術総合研究所)「「自分をどれだけさらけ出せるか?」;疾病予防・健康管理のための暴露意思量調査」
- 小林 知恵 先生(横浜国立大学)「集団責任論と価値の多元主義を基底とするデュアル・ユース研究・技術の倫理的評価法」
(上段左から、相馬先生、鈴木先生、下段左から小林先生、大野先生、岡崎先生)
各先生の発表の後には、担当していた選考委員から温かいコメントがありました。会場からも質問が出て活発な議論が展開されました。
続いて研究助成贈呈式では、令和6年度に新しく採択された6名の先生方へ目録の贈呈が行われました。
- 吉村 聡志 先生(京都大学)「心電図デジタルツインの構築とPHR(パーソナル ヘルス レコード)データの融合による心疾患予測モデルの開発」
- 永田 雅大 先生(東京科学大学)「非感染性インターフェロン産生の分子機構と自己炎症惹起機構の解明」
- 一條 遼 先生(京都大学)「未知の組織に着目した新規組織恒常性メカニズムの解明」
- 本池 総太 先生(京都大学)「ヒトiPS細胞を用いた多階層性顎骨解析モデルの構築と顎骨特異的病態生理機構の解明 」
- 佐々木 航 先生(奈良先端科学技術大学院大学)「感情AIによる心理的影響から個人を守る: 段階的実証実験を通じた倫理的検証」
- 得能 想平 先生(奈良先端科学技術大学院大学)「哲学的手法を用いたAIの公平性の事前評価基準の開発」(※)
(※得能先生はご欠席)
報告会と贈呈式の終了後、会場をうつして懇親会が開催されました。懇親会は佐々木信行 代表理事・理事長の祝辞から始まりました。
セコム財団の理事・選考委員である黒田玲子先生からは、「若い人は持っているエネルギーが違う、失敗してもそこから新しいところへ展開できる力がある。そして選考委員はそのような人を選んでいる。挑戦的研究助成はメンター制度をとっているが、この制度があるのはセコム財団くらいである。メンターは厳しいこともたくさん言うが、尊敬しながらお互いやり取りをする過程でとてもよいものが出来ている。みなさんと安全安心な社会をつくっていきたいのでよろしくお願いしたい」 との激励のお言葉がありました。
異なる専門分野やバックグラウンドをもつことから、初めは少し緊張しているようでしたが、世代や立場が近いということもあり、すぐに打ち解けていました。会場には新しく採択された課題の研究内容を紹介したパネルが展示され、他の研究者との意見交換やディスカッションも活発に行われました。
途中で各先生から一言ご感想をいただきました。贈呈を受けられた先生からは「循環器内科の臨床医としてER(Emergency Room)で勤務している。社会実装まで目指しているのでメンター制度を利用して研究を進めていきたい」「本日の報告内容を聞いて自身の研究が大丈夫かと不安になったが、3年後に本日のような報告ができるように、またセコム財団の助成を世の中へ広めていけるように進めていきたい 」「歯科医として歯科分野の臨床に携わってきたが、医療分野と比べ臨床面や研究面で遅れを感じ、基礎研究のレベルアップを目指して研究を行っている」 「AIが人間の内面状態を推測できるのか、その推測結果を人間が使うにはどうすればよいのか、セコム財団の助成で研究していきたい。メンターの先生から怒られるくらい様々なことを行い、議論できればと考えている」 などとこれからの意気込みが聞かれました。
助成期間が終わり成果報告をされた先生からは「ありがたかったのが、柔軟にお金を使わせていただいたこととメンター制度の2つ。とくにメンターの先生から、自身は考えていなかった新たな研究視点をいただき、広がりが出た」「研究の方向や資金の面で切羽詰まっていたときに、知り合いの研究者からセコム財団の助成を知り応募した。科研費とは違う助成金の柔軟性もよかったが、それ以上にメンター制度により有意義なフィードバックを沢山いただいたことに感謝している 」「メンター制度でいただいたアドバイスにより、自身の研究をゼロベースで見直すことができた」 などと感謝と決意が述べられました。
研究分野は違っても同世代の研究者が集まったということもあり、お互いにつながりを深めて、将来の交流の可能性を広げる貴重な機会となりました。

(前列左から)古関明彦 選考委員、桜田一洋 選考委員、宮田満 選考委員、佐々木信行 代表理事・理事長、黒田玲子 理事、上田理 代表理事・理事長代行、塩見美喜子 選考委員と、(後列が)成果報告をされた先生

(前列左から)桜田一洋 選考委員、古関明彦 選考委員、宮田満 選考委員、佐々木信行 代表理事・理事長、黒田玲子 理事、上田理 代表理事・理事長代行、塩見美喜子 選考委員と、(後列が)贈呈を受けられた先生