令和6年10月25日 令和6年度 一般研究助成 研究成果報告会および研究助成贈呈式を開催

令和6年10月25日(金)、東京・千代田区の帝国ホテルで、令和6年度一般研究助成の研究成果報告会および研究助成贈呈式が開催されました。セコム財団関係者約30名が参加しました。

当日は、上田理 代表理事・理事長代行の挨拶より開会し、最初に研究成果報告会が行われました。

(左)開会の挨拶をされる上田理 代表理事・理事長代行

セコム財団の一般研究助成は、安全で安心な社会の実現を目指し、多彩な専門家からなる選考委員会による幅広い視点のもとで審査を行っています。初めの1年は準備研究として研究の方向性を明確にし、その後の面接審査を経て、3年間の本格研究へと進むことが特徴です。

研究成果報告会では、令和2年度に新規採択され、これまで4年間にわたって研究を進めてこられた次の5件の課題について、研究代表者の先生より成果報告が行われました。

  • 斎藤 隆泰 先生(群馬大学)「弾性波動論とAIの融合による完全非接触レーザー超音波非破壊検査システムの開発」
  • 仁科 博史 先生(東京科学大学)「異常細胞排除機構を利用した先制医療法の開発」
  • 岩見 真吾 先生(名古屋大学)「血中骨代謝マーカー変動予測に基づく骨量減少予防の個別化予測医療の実現」
  • 大月 敏雄 先生(東京大学)「住宅内移動時転倒のヒトと空間双方からのリスク評価標準化と予防サポートアプリ開発」
  • 井田 徹哉 先生(東京海洋大学)「アンジュレータ型潮流発電機の開発」

報告をされる先生
(上段左から、斎藤先生、仁科先生、下段左から岩見先生、大月先生、井田先生)

各先生の発表の後には、担当していた選考委員から温かいコメントがありました。会場からも質問が出て活発な議論が展開されました。

続いて研究助成贈呈式では、令和6年度に新しく採択された6名の先生方へ目録の贈呈が行われました。

  • 川島 英之 先生(慶應義塾大学)「機密性と検証可能性で安心なデータベースシステム」
  • 坪山 幸太郎 先生(東京大学)「機能性人工ミニタンパク質とAIによる革新的医薬品プラットフォーム構築」
  • 城村 由和 先生(金沢大学)「個体老化・加齢性疾患の鍵となる老化細胞を規定するシグネチャーの同定と制御法の創成」
  • 眞鍋 一郎 先生(千葉大学)「マウスモデルにおける慢性疾患に起因する造血免疫系への病理的ストレス記憶の機序解明と応用」
  • 酒井 雄也 先生(東京大学)「レジリエントかつ持続可能な脱炭素型建設技術の確立」
  • 中島 拓也 先生(東京大学)「分野・地域間協力のための気候変動適応評価モデルと合意形成促進メカニズムの構築」

目録の贈呈

報告会と贈呈式の終了後、会場をうつして懇親会が開催されました。懇親会は佐々木信行 代表理事・理事長の祝辞から始まりました。


祝辞を述べる佐々木信行 代表理事・理事長(左)と黒田玲子 理事(右)

セコム財団の理事・選考委員長である黒田玲子先生からは、「セコム財団は科研費などとは違い、運用に柔軟性がある。研究がうまくいかないことがあるのは理解しており、失敗してもそれを活かして新しい道や違うテーマを定めて構わない。何とかして新しい分野や知見をつくり、それを安全・安心に結び付けていくことを期待している」との激励のお言葉がありました。

参加者は異なる専門分野やバックグラウンドをもつ方々でしたが、第一線の研究者同士、すぐに談笑の声がいたるところから聞こえました。会場には新規採択された課題のパネルが展示され、活発な意見交換がされていました。


盛り上がっていた懇親会


懇親会では新規助成の研究内容を紹介したパネルが展示されました

途中で各先生から一言ご感想をいただきました。新規採択の先生からは「博士号を取ったばかり。民間企業時代からの取り組みを実現するためにまい進する」「今後、助成継続にあたり大変な審査が待っていることを知り、身の引き締まる思い」「研究室の機材が故障し研究が止まる状況になっていたが本助成のおかげで再開できた」「地方大学の研究室でこの規模の助成は大変ありがたい」「タンパク質の人工合成技術は今年のノーベル賞の受賞技術だが、これを超えるべく研究を進めていく」「銀行取引などを支えるトランザクションに関する重要な技術が、現在、海外勢に席巻されている。これを国内に取り戻すべく研究にまい進する」などと、これからの意気込みが聞かれました。

助成期間が終わり成果報告をされた先生からは「セコム財団のような民間から資金をいただいての研究なので、どのように社会に還元すべきかを念頭に置いている。これからも続けていく」「採択時はCOVID-19の影響が出始めた時期で、セコム財団の面接や大学の授業もオンライン形式となり、研究遂行をふくめすべてが手探りだった」「COVID-19の影響で資材の購入がままならず、計画変更を余儀なくされる中で、助成金の使用時期を含め自由にやらせてもらった」「チームで研究を行っており、本助成でさらに研究すべき課題がさまざま見えてきた。COVID-19の影響は大きかったが、研究計画や助成金の使途など柔軟に対応していただいた」「挑戦的研究助成から始まって今回の一般研究助成まで支援をいただいた。選考委員に研究の方向性など様々なサポートをしていただき感謝している。このつながりを今後も継続していきたい」などと、感謝と決意が述べられました。

最後に、上田理 代表理事・理事長代行が挨拶し、セコム財団が設立された経緯をふまえながら「社会に安全・安心を提供していくためには、企業が事業としてやるべきことと、学問として科学技術を発展させることを両輪として行っていかなければならない。これからもご協力、ご支援、助成金のご活用をお願いしたい」との言葉で懇親会が終了となりました。

COVID-19の影響で、成果報告をされた先生方は採択時に贈呈式ができず、一堂に会するのは最初で最後となりました。研究分野は違っても第一線の研究者が集まったということもあり、お互いにつながりを深めて、将来の交流の可能性を広げる貴重な機会となりました。


(前列左から)黒田玲子 理事、佐々木信行 代表理事・理事長、上田理 代表理事・理事長代行と、(後列が)成果報告をされた先生


(前列左から)黒田玲子 理事、佐々木信行 代表理事・理事長、上田理 代表理事・理事長代行と、(後列が)贈呈を受けられた先生