令和6年5月28日 令和5年度 挑戦的研究助成 研究成果報告会および研究助成贈呈式を開催

令和6年5月28日(火)、東京・千代田区の東京會舘で、令和5年度挑戦的研究助成の研究成果報告会および研究助成贈呈式が開催されました。会場に来られない一部の先生のためにオンラインを併用したハイブリッド開催とし、セコム財団関係者約30名が参加しました。

当日は、目﨑祐史 代表理事・理事長代行の挨拶より開会し、最初に研究成果報告会が行われました。


開会の挨拶をされる目﨑祐史 代表理事・理事長代行

セコム財団の挑戦的研究助成は、40歳未満の若手研究者による新しい領域開拓への挑戦を支援する研究助成です。研究の助成に加えて、研究の方向性の議論など、研究者の育成という面からも支援を行っています。

研究成果報告会では、令和2年度に新規採択され、これまで3年間にわたり研究を進めてこられた以下の6件の課題について、研究代表者の先生より成果報告が行われました。

  • 菅原 健 先生(電気通信大学)「アナログ回路へのレーザーフォールト攻撃の安全性評価」
  • 谷澤 健 先生(玉川大学)「安全安心なIoTの実現に向けた物理レイヤ暗号化セキュア無線通信システム」
  • 佐藤 克成 先生(奈良女子大学)「「温もり」ある次世代メディアを実現するフレキシブルペルチェマトリクスの創出」※
  • 山口 暢俊 先生(奈良先端科学技術大学院大学)「植物1細胞エピゲノム解析による分化全能性の理解」
  • 高岡 勝吉 先生(徳島大学)「多様な活動休止現象の共通原理の解明」
  • 奥山 輝大 先生(東京大学)「光遺伝学的アプローチを用いた多数個体間の社会性行動の神経メカニズム 」

※佐藤先生はオンライン参加での発表となりました


報告をされる先生
(上段左から、菅原先生、谷澤先生、佐藤先生、下段左から山口先生、高岡先生、奥山先生)

各先生の発表の後には、担当していた選考委員から温かいコメントがありました。会場からも質問が出て活発な議論が展開されました。

続いて研究助成贈呈式では、令和5年度に新しく採択された7名の先生方へ目録の贈呈が行われました。

  • 橋本 雄太 先生(埼玉医科大学病院)「ウェアラブルデバイスによる活動量モニタリングとAIを用いた地域高齢者救急搬送低減システムの開発」
  • 華井 明子 先生(千葉大学)「ヘルスケアとしてのAIコミュニケーション基盤の開発によるウェルビーイングの達成」
  • 大田 達郎 先生(千葉大学)「臨床研究におけるデータ保護と共有の両立:Code-to-Data の安全性検証」
  • 栗原 美寿々 先生(北海道大学)「巨大タンデムクラスタによる染色体安定性制御メカニズムの解析」
  • 山崎 啓也 先生(東京大学)「「場」と組織・時期特異的発現に着目した生殖細胞のトランスポゾン抑制機構の解明」
  • 椙下 紘貴 先生(東京大学)「脳発生における動的な組織特異的エンハンサーの空間的制御機構の解明」
  • 三重野 雄太郎 先生(佛教大学)「生殖医療をめぐる倫理的問題 ―ドイツ語圏における議論状況を参考に―」
目録の贈呈

報告会と贈呈式の終了後、会場をうつして懇親会が開催されました。懇親会は佐々木信行 代表理事・理事長の祝辞から始まりました。

祝辞を述べる佐々木信行 代表理事・理事長(左)と黒田玲子 理事(右)

セコム財団の理事・選考委員である黒田玲子先生からは、2016年にノーベル賞を受賞した大隅良典先生のオートファジーに関する研究を例に挙げて、基礎研究の大切さ、研究者としてのステップアップには基礎研究での挑戦が必要であること、そして挑戦的研究助成には長年その分野で研究をしてきたメンターがいるので意見を聞きながら飛躍してほしい、との激励のお言葉がありました。

異なる専門分野やバックグラウンドをもつことから、初めは少し緊張しているようでしたが、世代や立場が近いということもあり、すぐに打ち解けていました。会場には新規助成の研究内容が書かれたパネルが展示され、他の研究者との意見交換やディスカッションも活発に行われました。


盛り上がっていた懇親会


懇親会では新規助成の研究内容を示したパネルが展示されました

途中で各先生から一言ご感想をいただきました。新規採択の先生からは「救急および地域医療の現場をもっていることを活かせるテーマをさがしてセコム財団に応募した。採択され、ありがたい」「多様性に富んで自由に研究を行う研究者に向いている助成金がある、と聞いて応募した。申請したテーマも多様な視点から組んだ研究だが、採択されて感謝している」「子供が生まれ研究がストップしていたが、今回採択されたことで、また研究を続けられると思った。感謝している」「若手対象でこの金額規模の助成がなかなか無い。研究室から独立した研究がやりやすくなる」「自身は倫理法学を専門としている。単独かつこの金額規模での倫理法学の助成は少ない。セコム財団がELSI分野で募集をしていることは、法学の分野からありがたい」「挑戦の話があったが、自分の子供の代まで安全な社会ができるように、との思いで研究させてもらう」「メンタリング制度があることがきっかけで応募した。自身のステップアップのためにはこのような制度が必要と考えた。厳しさをお願いしたい」などとこれからの意気込みが聞かれました。

助成期間が終わり成果報告をされた先生からは「30代の終わりぐらいに3年間、安定して研究ができる財源をいただいたことは、非常に助かった」「メンタリングのときに、挑戦してください、有効に使ってくださいと言われ、やりたい研究を精一杯やった。順調に成果もでているので、これからも続けていく」「セコム財団は、ボトムアップ型の研究をやらせていただける。月を目指して火星に行ってしまうようなことをやらせていただけるのはありがたい」などと感謝と決意が述べられました。

COVID-19の影響で、成果報告をされた先生方は採択時に贈呈式ができず、一堂に会するのは最初で最後となりました。研究分野は違っても同世代の研究者が集まったということもあり、お互いにつながりを深めて、将来の交流の可能性を広げる貴重な機会となりました。


(前列左から)黒田玲子 理事、佐々木信行 代表理事・理事長、目﨑祐史 代表理事・理事長代行と、
(後列が)成果報告をされた先生

(前列左から)川上英良 選考委員、佐々木信行 代表理事・理事長、黒田玲子 理事、目﨑祐史 代表理事・理事長代行と、
(後列が)贈呈を受けられた先生