ジェネティック・シティズンシップに基づく難病患者研究参画の基盤整備に関する研究
渡部 沙織 先生

東京大学先端科学技術センター 人間支援工学分野 中邑・近藤研究室 日本学術振興会特別研究員PD

日本では、ELSIの研究をしている研究者は少数です。

アメリカではヒトゲノム計画以降、ELSIの研究は大規模に行われてきましたね。日本ではまだ研究者の中でも馴染みが薄く、ELSIの名前がついた研究助成制度もこれまで殆どありませんでした。

この特定領域研究助成が設立された事を知って、ついに日本でも……と感慨深い思いがしました。自分の研究計画が採択された事は勿論大変光栄な事でしたが、今後この助成が日本のELSI研究を育てる契機になるといいと思っています。特に、文理問わず同世代の若手の研究者が関心を持ってくれる事を期待しています。

最後に、これからの展望についてお聞かせください。

今後は患者主導のレジストリ運営のあり方についてさらに調査・研究を進め、日本でシティズンシップ・モデルに基づいた患者の研究参画を実現するために必要な政策基盤について、調査研究を続けていきたいと思っています。研究参画、というと日本の患者さんや市民の方々にとっては、縁遠いサイエンスの世界の話だと感じられる方も多いかもしれません。しかし、アメリカや欧州では研究参画は患者さんの社会参加の選択肢の一つで、文字通り患者さんのシティズンシップ=市民権でもあります。

たとえどんな疾患にかかっても、患者さんが社会で活躍できる仕組みをつくること、それが研究者としての私の最終目標です。

あらゆる障害、あらゆる疾患の方々が社会に参加できるシステムを作っていきたい

日本の難病政策は、これからどんどん進化していく。そんな期待が広がりました。
インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。