深層学習を用いた細胞内微細構造の超高効率解析法の確立と病態予測・解析への応用
平林 祐介 先生

東京大学 工学系研究科 化学生命工学専攻 准教授

ミトコンドリアやクリステ構造以外の細胞内微細構造に対しても、立体的な構造解析は可能でしょうか。

もちろんです。現在はこれまでに確立した手法を、小胞体-ミトコンドリア接触やゴルジ体、リソソームなどの細胞内微細構造の解析に応用しています。最終的には、細胞微細構造の正確なアトラスを作成して、各構造間の位置の相関や量を明らかにしたいと思います。

なお、3次元再構築を用いると、これまでより正確に対象を把握できるため、関心を持ってくださる研究者も多く、共同研究の申し込みもいただいております。生命科学分野の発展に貢献できることを嬉しく思っています。

本研究には、先生の研究室の学生も参加していますか。

はい。特に深層学習に関しては、ひじょうに詳しい学生や研究員がチームに参加してくれています。自分の研究においては、チーム作りが重要なのです。

学生に教わることも多いです。たとえばPHILLOWは、彼らの創意工夫により生まれました。このプラットフォームは世界的に高く評価され、アメリカの財団から助成を受けています。

大きな可能性はあるものの、これまでにない研究テーマなので、初めは本当にできるのか不安でした。成果を出すことができたのは彼らの協力のおかげです。

優秀なチームメイトたちの活躍により、ミトコンドリアやクリステ構造から病態や病因を探ろうとする研究に関しては、国内はもとより世界レベルでもトップレベルに達していると自負している

ありがとうございました。最後に、先生が特定領域研究助成に応募された契機について教えてください。

学生時代の指導教官の後藤由季子先生から、この助成制度について教えていただきました。応募要項を調べたところ、募集テーマが自分の研究にぴったりだと感じたため申請を決意しました。

助成金はネットワークサーバーなどのコンピューター機器やOPA1遺伝子に変異を導入したマウスの購入費用、学生スタッフへの人件費などに使わせていただいています。また、電気代が高騰しているほか、連続切片の切削に用いるダイヤモンドナイフは高額なうえメンテナンス代がかさむので、非常に助かっています。

さらに、何人もの先生方がこの研究の可能性をご理解くださり、様々な提案をしてくださったので、視野が広がりました。とても感謝しています。“穴場”ですが、研究者には是非目指してもらいたい、すばらしい助成制度だと思います。

深層学習のアルゴリズムの開発および最適化に携わる大学院生の菅翔吾さんと。助成金のおかげで、学生スタッフも経済的な心配をせずにプログラミングに専念できるとのこと

先生が取り組む細胞内微細構造の解析の効率化が、病因の解明や治療法の開発に貢献することを心から願っております。お忙しい中、長時間のインタビューにご対応いただき、ありがとうございました。