ピエゾアクチュエーターの圧電効果によってパンチルト用レンズアレイに微小な動きを与えることで、従来の機械的機構よりも高速なパンチルトを実現します。ライトフィールドカメラの原理を組み込み、さらにマルチGPUを導入しているため、撮影後のリフォーカス(焦点を合わせ直す)処理をリアルタイムで実行。耐久性にも優れているため、大量生産が可能です。
現在の進捗状況としては、目標である±30°のパンチルト角での視差画像群の合成、また分散マルチGPUシステムでは、目標値である1フレームという短時間内での高速リフォーカス処理に成功しています。ですが、ホストPCからのマルチGPUアレイに対する視差画像群の分配時間が長く、課題となっています。
はい。最初に入った研究室の先生は、立体表示において「立体視はなぜ疲れるのか」というテーマで、脳や目の分野からアプローチされていました。ただし、良い意味で放任主義的な指導をする先生でしたので、先生の研究テーマに限らず、学生はそれぞれ自由な研究をすることが許されていたのです。
私は応用物理学の出身でしたが、コンピューターをやりたいと思っていましたし、当時は光コンピューターの研究が流行していました。光コンピューターとは、光波が持つ空間的な並列性と時間的な高速性を利用したコンピューターの総称で、処理能力をさらに向上させるために、現在でも注目されている種類のコンピューターです。
そのなかでも私が研究したのはCGH(Computer-Generated Hologram)といって、ホログラムを立体表示ではなく光情報処理に用いることで、論理演算を行うという概念でした。その先生はほとんど面倒を見てくれませんでしたが「いいね、論文にしなさい」と言って下さったので、光の分野に一層のめり込んでいきました。