HOME > 研究者 > 高木康博先生 > 次世代画像入力システムを実現する高速パンチルト・リフォーカスカメラの開発(第1回)

市民生活の安全を担うセキュリティの高度化、人工知能による画像認識の精度向上化を実現するためにも、カメラの重要性は高まる一方です。最近のカメラの性能は、高解像度化や高フレームレート化が進んでいますが、視線移動や焦点合わせには、未だに従来の機械的機構が用いられています。そのため、対象を高速追尾し、常に焦点を合わせ続けることは非常に困難です。

次世代を担う画像入力システムの技術革新について、東京農工大学大学院工学研究院先端電気電子部門の高木康博先生にお話を伺いました。

先生が専門とされている研究について、教えてください。

映像の立体表示について研究しています。皆さんは次世代の立体映像技術、インテグラルイメージング(Integral Imaging)という手法をご存知でしょうか。簡単に言うと、特殊なメガネやゴーグルなしで、裸眼で鑑賞できる立体映像再生技術です。スーパーハイビジョンの次にくる技術として注目されています。

NHKが先行研究を行っているのですが、私の研究ではさらにシースルー化(see-through)を目指し、フラットパネル型シースルー立体ディスプレイを開発しています。ガラスのような透明のディスプレイなら、背景が透過して見えますよね。これをシースルーといいます。このディスプレイを用いれば、透過した物体の上に立体表示映像を映し出すことができるようになり、対象物の長さを同時に表示させるなど、単なる立体表示より用途が広がるはずです。一種のAR(Augmented Reality:拡張現実)技術と呼んでもいいかもしれません。

スーパーハイビジョンの上をいく、立体ディスプレイを作りたい

立体表示の研究をされている先生が、なぜカメラの開発を行うに至ったのでしょうか。

私が開発した「フラットパネル型シースルー立体ディスプレイ」が、わずかに移動すると、透過した背景の物体や文字が大きく移動、回転するという現象に気付いたからです。その理由は、このディスプレイ上のレンズアレイにありました。レンズアレイとは、微少なレンズを平面に配列したもので、通常のレンズより広角に偏向します。

たとえば、このディスプレイの斜め左側に物体を配置すると、通常なら何も映らないはずが、光軸が偏向するため画像のシフトが起こり、映るようになるのです(下図参照)。その現象を用いれば、わずか0.1mmほどレンズを動かすだけで、物体を追尾して映し出すパン(左右)やチルト(上下)が可能になるのです。

着想に至った経緯
研究の背景と目的
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