HOME > 研究者 > 本間尚文先生 > 高安全・高信頼な情報通信のためのトロイフリーLSIシステム設計・検証技術の開発(第2回)

情報機器に潜伏したハードウェアトロイ(HT)は、ユーザーが想定できないタイミングで動き出し、情報の改ざんやシステムの脆弱性を外部に漏洩させるなどの機能を有しています。人々の生活がさまざまなシステムによって支えられており、その情報がインターネットを介して繋がっている昨今、システムを構成する機器のハードウェアにHTが挿入されていないという保証なしに、社会の安全・安心は保たれません。

そのため本間先生は、LSIの設計仕様、回路機能の基本設計の段階でHTを検知する技術を開発されました。第2回のインタビューでは、その後の工程におけるHT検出技術について、ご説明いただきます。

まずは、前回のおさらいからお願いします。

本研究は、LSI(大規模集積回路)にハードウェアトロイ(HT)が挿入される脅威に対し、①設計仕様から回路機能を設計するフロントエンド設計時、②回路記述(HDLコード)から回路レイアウトを設計するバックエンド設計時、③LSI製造後のパッケージおよびシステム実装時・実装後の3段階に焦点をあてて、各段階におけるHT検出、HT挿入困難化技術の開発に取り組んでいます。

フロントエンド設計時は、設計仕様とHDLコードをZDDという特殊な形式記述で表現し、双方の等価性を証明することで、従来方法では不可能だった「全入力パターンを検証する」と同等の保証が得られるようになりました。さらに検証時間も大幅に短縮されたため、これまで難しいとされていた暗号回路の検証も可能です。

研究するうえで意識しているのは、一貫性。このHT検出技術も、どのような回路にも適応できることを目指した

HTを検知したとき、それがどこに入っているのか、どのタイミングで動き出すのかは、わかるのですか。

研究を進めても挿入場所を数学的に解析することは難しく、完全に同定することは無理でした。ですが、「この入力時に仕様外の動きが生じる」ことはわかるため、そこから見当をつけることは可能と考えています。

ただし、この方法で検出できるのは入力によって出力が狂うもの、関数が変わって機能を改変するものに限定されます。抵抗値が少し増えたり、一部の電流量が増幅されたりすることによって異なる結果が生じるものは、検知できません。

アナログ的な変化は検知できないということですね。

そうです。ただしそれは、バックエンド設計データに入ったHT検出技術によって発見できるようになりました。この技術は共同研究者である永田真先生(神戸大学 大学院 科学技術イノベーション研究科 教授)がメインに開発を進めています。

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