もしコリバクチンが産生菌自身のDNAに結合すれば、自分が死んでしまいます。従って、自分の染色体にコリバクチンを結合させないための仕組みがあるのです。
実は、コリバクチン産生菌は、菌の中では無害の前駆体(プレコリバクチン)を作り、それを菌の外に出すときに、コリバクチンの完成体にして排出することが知られています。細胞膜を通過するときにプレコリバクチンを加水分解してコリバクチンにできる酵素を持っているのです。コリバクチン産生菌に特有のこの酵素は、ClbP酵素と名付けられています。

静岡県立大学
渡辺 賢二教授
Kenji Watanabe
もしコリバクチンが産生菌自身のDNAに結合すれば、自分が死んでしまいます。従って、自分の染色体にコリバクチンを結合させないための仕組みがあるのです。
実は、コリバクチン産生菌は、菌の中では無害の前駆体(プレコリバクチン)を作り、それを菌の外に出すときに、コリバクチンの完成体にして排出することが知られています。細胞膜を通過するときにプレコリバクチンを加水分解してコリバクチンにできる酵素を持っているのです。コリバクチン産生菌に特有のこの酵素は、ClbP酵素と名付けられています。
コリバクチンの構造や産生菌の性質を化学的に解明することによって、大腸がんの予知や予防、治療へのアプローチが具体的に見えてきます。
胃がんの原因であるピロリ菌を抗生物質で除菌すれば、胃がんのリスクが格段に下がることが知られています。かつて日本人には胃がんで亡くなる人が多かったのですが、ピロリ菌を制圧することによって、胃がんの患者も、胃がんで亡くなる人も減りました。
同様に、大腸がんの原因となるコリバクチン産生菌を排除することができれば、大腸がんの発症リスクが大幅に下がり、罹患者を減らすことができると期待しています。