2006年にフランスのパスツール研究所の研究グループが、大腸がんの原因となる毒性物質を作り出す大腸菌を発見し、その毒性物質をコリバクチンと名付けました。
この大腸菌とコリバクチンとの関係は、胃がんにおけるピロリ菌とその毒性ペプチドとの関係にあたります。大腸がん患者のおよそ7割がコリバクチン産生菌を保持しており、コリバクチンが大腸がんの発生に確実に寄与することが示されています。
コリバクチンの発見が発表された2006年の時点では、毒性物質を「コリバクチン」と命名したものの、その化学構造は決定できていませんでした。ある大腸菌と人の細胞を混ぜ合わせると、染色体の複製ができなかったり、細胞が肥大したり、DNAが剪断されたりする現象が観測されたので、細菌(Bacteria)の一種であるこの大腸菌(Escherichia coli)が「何か」を作っているとして、その物質をコリバクチン(colibactin)と呼称したのです。