骨粗鬆症の治療薬に抗RANKL抗体という薬があります。抗RANKL抗体は、RANKLに特異的に結合してRANKL/RANKシグナルを阻害するため、破骨細胞阻害剤として広く使われています。
骨粗鬆症のもう一つの代表的な治療薬としてビスフォスフォネート系製剤があり、こちらも破骨細胞阻害剤ですが、RANKLとは無関係の薬です。
実際に骨粗鬆症の治療をしておられる患者さんの胸部CTのデータから、血管の石灰化を調べたところ、ビスフォスフォネート系製剤より抗RANKL抗体を使ったほうが、石灰化が抑えられることが確かめられました。
骨粗鬆症の患者さんで、血管石灰化のリスクが高いと思われる人には、治療薬に抗RANKL抗体を選ぶことで石灰化が予防できる可能性があります。
さらに一歩進んで、血管のみでRANKL・OPG系を調節する方法を開発すれば、そこから新しい治療戦略が見つかる可能性もあります。

異所性石灰化が原因となる疾患は動脈硬化の他にも、変形性関節症や後縦靱帯骨化症、進行性骨化性線維異形成症など様々なものがある。石灰化メカニズムの解明は、他の難治性疾患の治療にも役立つと期待している
これまで骨と免疫の相互作用をメインに研究してきたので、動脈硬化という循環器系の疾患は初めて取り組む分野でした。血管が骨のようになってしまう病態ですから、骨免疫学における知識や経験がうまく活かせるだろうという予感はありましたが、まだ明確な実績が積めていない状態だったのです。その段階でこれだけ大型の予算をつけていただけるところは、他に見当たりません。チャレンジングな試みを評価して採択していただけたことに感謝しております。
また、どこにお金や労力を費やすべきかは、研究を進めてみないと分からない面があります。その点、助成金の使い方の自由度が高く、好きなようにやらせてもらえたことが大変ありがたかったです。