HOME > 研究者 > 関谷毅先生 >「お母さんと胎児の常時見守りセンサーシートの開発 〜出産前から母子の安全安心に貢献する〜」(第1回)

近年は少子高齢化により、農業、工業、医療など、さまざまな分野で深刻な人手不足が懸念されています。

とくに医療分野における産婦人科医不足は、深刻な社会問題といえます。日本の周産期医療は世界トップクラスであるにも関わらず、出生率の低下とともに全国で産科が閉鎖.し、妊婦さんは特別な事情がない限り4週間に1度の検診以外、胎児の健康状態を知る機会がないのが実情です。

今回は、このような産婦人科医不足の問題を解消する糸口について、大阪大学産業科学研究所の関谷毅先生にお話を伺いました。

関谷先生のご専門をお教えください。

有機材料の多様性、多機能性を応用した柔らかい電子デバイス、有機エレクトロニクス・フォトニクスを専門に研究しています。なかでも、フレキシブルエレクトロニクスを用いた実空間のリアルタイムセンシングが主要研究課題です。センサにAIを搭載し「現代社会における潜在的な人手不足をテクノロジーによって解決する」ことを目標としています。

人手不足は、AIやIoTを用いたテクノロジーで補える可能性があると語る関谷先生

なぜ妊婦さんに絞った研究開発をされたのですか。

現代社会の人手不足のなかでも、産婦人科医不足はとりわけ深刻な問題であると考えたのが、本研究の着想点です。

近年は少子高齢化にともない、産婦人科医不足が社会問題となっています。専門医は、その専門性の高さから、急に数を増やすことが困難です。現在、1年間に約100万人の子どもが生まれますが、産婦人科医の数は約1万人以下と少なく、現役で患者を診療している医師となると、さらにその数は減少します。産婦人科医ひとりあたり、子ども200〜300人は診療しなければなりません。したがって、胎児ひとりあたりにかけられる診療時間は限られてしまい、妊婦検診の頻度は平均して「4週間に1度、出産直前でも1週間に1度程度」です。この機会以外に、妊婦さんはお腹の中の胎児の状態を知る術がありません。

どのご家庭でも、子どもを授かれば幸せな気持ちになり「安心して健康な子どもを産みたい」と望みます。それは当たり前の希望であるにもかかわらず「胎児の健康状態がわからず、障害が現れたり、最悪の場合は流産するかもしれない」というリスクにさらされているのが現状なのです。

フレキシブルエレクトロニクスを用いたリアルタイムセンシングによって、産婦人科医不足を解消する、ということでしょうか。

その通りです。お腹にパッチ式の電極シートを貼るだけで、妊婦さんと胎児の健康状態がわかるウェアラブルセンサの開発をしています。これまでは、病院で心電図を取らないと胎児の様子がわかりませんでした。本研究では、ご家庭で貼るだけで、病院の機材と同等の精度で母胎、胎児心電をとることができます。

妊婦、胎児のヘルスケアを24時間行う目的
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